その時隣で ページ36
私の残りの時間はもう100日もない。多分、50日とかそのあたり。
その時間の中で何ができるかは当然限られる。
したい事ならたくさんある。
海へ行くとか、爆豪くんとお祭りに行くとか、お茶子ちゃんとお泊まりするとか。
けれども、死ぬほど叶えたいはずなのにどうしたって叶わない願い事だってたくさんあるのだ。
「これから多分みんなは、テスト受けたり、合宿行ったり、仮免習得したり、たくさんの事を乗り越えてヒーローになるんだと思う。
もちろん楽しい事ばかりじゃなくて、大きな壁にぶつかるかもしれない。時には挫折する事だってあるかもしれない。」
あんなに何でもこなしてしまう爆豪くんだって、どれだけまっすぐなお茶子ちゃんだって、きっとどこかで躓いてしまう。
私がどれだけ力になりたくても、「大丈夫だよ」「絶対できるよ」と言う言葉はきっと届かない。
「その時私は隣にはいないと思う」
「……えっ、と」
「USJの時からね、本当はずっと言わなきゃって思ってたんだけど」
あの時みたいな「嫌われるかもしれない」と言う気持ちはない。A組のみんななら誰だってそんな事思ったりしないはずだ。
彼らはもう輝いているヒーローだから。
けれど、どれだけ信じていたって不安はある。
どれだけ信じていても勇気がいる。
「私ね、個性の問題で16歳まで生きられないんだ」
「…え？」
そういったお茶子ちゃんの顔は、あの時の爆豪くんのように困惑に満ちていた。
「ごめんね、今まで言えなくて。最初は怖くて、でもちゃんと言おうって思ったんだけど…なかなかタイミングが…なくて、」
「…………………」
「……………ごめん」
何も言わないお茶子ちゃんの顔が見れなかった。
お茶子ちゃんは優しい人だ。私のこんな話で、きっとお茶子ちゃんを傷つけてしまうのだろう。
胸がキリキリと痛む。
けれどその時、お茶子ちゃんが強く私を抱き締めた。強く強く、抱き締めた。そして嗚咽を零しながらじんわりと私の肩を濡らす。
お茶子ちゃんは何か言葉を言うわけではないけれど、その涙から悲しみも苦しみも伝わってきて、息が止まりそうになった。
そうしてお茶子ちゃんが盛大に泣くものだから、私の目からはとめどなく涙がこぼれ落ちたのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 595人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
