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流れる涙を拭う事もせず、僕は立ち上がってニノの墓に近づく
そっと手を伸ばして触れてみると、瞬間的な突風が霊園を吹き抜ける
「っわ！」
「うお！」
思わず目を瞑る
耳元で鳴るごうごうとした音が収まって目を開ければ
「あ・・・」
「おお、綺麗だな」
ニノの墓を取り囲むように、ピンク色の花びらが残り風に舞う
「初めて見る花だな」
ほれ、サトシくんがそう言ってその花弁を僕に差し出す
両手を器にして受け取ったそれは、淡いピンク色の小さな花
それは何度も見たことのある花
訪れる春を祝う花
僕の名前
ニノ
貴方は桜のような人でした
とても儚げな笑みを浮かべる人
今にも消えてしまいそうな真っ白な人
悪意という名の暴風や雨を一身に受け、人知れず散っていった人
桜の花は春に咲き、一瞬の命を輝かせて、そして静かに散っていく
咲いている間は誰からも愛されるのに、終わってしまうと見向きもされない可哀想な花
でも桜の咲かない春はない
どんなに激しい雨に打たれようと
どんなに強い風に吹かれようと
次の年には再び、暖かい春を連れてくる
ねえ、カズ
貴方は桜の花みたいな人でした
初めて会ったときから、僕は貴方に惹かれていました
貴方の命は僕の目の前で一瞬にして奪われてしまったけど
貴方の守ったこの世界は、また新しい日々を迎えます
僕はこの世界に来て、苦しい思いをいっぱいしました
見たくないもの、知りたくないもの、沢山ありました
でも貴方に会えたから
貴方と出逢い、同じ時間を共有し、同じ痛みを分け合ったから
僕は僕の弱さを認め受け入れ、戦う強さを手に入れました
季節は巡り、時間は流れて
また春が来ます
貴方のように儚くも美しい、そんな花の季節が来ます
僕がこの世界に来たことに何か理由があったのだとすれば
それはカズに出逢うことだったんだと、そう思います
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しゅり(プロフ) - 乃絵さん» コメント有難うございます。乃絵さんの心に触れる作品を書けたこと、嬉しく思います。悲しい終わり方だけれども、どこか救われるものがあればいいなと思い書いた作品なので、素敵な感想頂けて安心しました。楽しんでいただけて何よりです！ (2016年5月13日 10時) (
レス) id: 642534afe5 (このIDを非表示/違反報告)
乃絵(プロフ) - 完結おめでとうございます。世界観に引き込まれて読んでいました。中心の3人がそれぞれの優しさで世界を動かし、胸が詰まる思いでした。先の世でカズナリとサトシ、出会えるといいなと思います。読ませていただいてありがとうございました。 (2016年5月1日 14時) (レス) id: 40036218a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゅり
| 作成日時：2016年4月15日 19時
