＊ ページ43
今日あったばかりの人と二人きりなんて、普段なら耐えられないはずなのに、和也さんとだと、不思議と居心地の良さすら覚えるのはどうしてだろう
「ねえ、ジュンくん。一つ、聞いてもいいかな」
風の音だけが支配していた静寂を、ぽつり破る一言
「この国は今、君にはどう見える？」
「どう、って・・・」
曖昧な問いにただ同じ言葉を繰り返せば、唐突過ぎたね、と申し訳なさそうな声が返ってくる
「二十年前の俺たちは、叶えたい願いの為に、譲れない想いの為に全力を尽くして、戦って。その結果、望みを果たせたけれど。それがきっかけで、紛争へと繋がっていったんだ」
思いもよらなかった言葉に、ひゅっと喉が鳴る
「もしまた同じ選択を迫られたとしても、俺も智も、翔さんだって、迷う事なく同じ道を選ぶよ。何を犠牲にしてでも手にしたい夢だからこそ、諦めるわけにはいかないから。でも、俺たちが違う道を選んでいたら、ここには今、違う未来があったかもしれない。それこそ、御両親だって・・・」
「なんで、そんな・・・。なんでわざわざ、そんな事、言うんですか・・・」
「知りたかったから、かな。俺たちは間違ってなかったのか、正しい道を選べたのか。・・・聞かせてほしいんだ。他の誰でも無い、ジュンくんの言葉で」
弱々しい言葉とは裏腹に、力強い双眸に射抜かれる
ああ、そうだったんだ、と瞬時に理解した
きっと今日この日、この問いが投げ掛けられる事は決まっていた
五人で一つの机を囲み、同じ時間を共有し、そして彼と・・・彼らと向き合う事は、ずっと前から決まっていたのだ
.
.
もしも、父さんと母さんが生きていたら
もしも、紛争が起こらなかったら
そんな夢物語を、一度も考えたことが無いなんて、そんなのは嘘だ
自分の境遇を恨んで、ぶつけようのない怒りを抱えて、どうしようもなく息苦しい想いに打ちのめされた事もあった
心無い差別に傷付いて、記憶に無い両親の愛に焦がれて、行き場の無い悲しみにただ叫ぶしか出来ない事もあった
だけど
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 570人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、最後までお付き合いいただきありがとうございました！ 出来るだけハッピーエンドを迎えられるように、と思っていたので、そう言って頂けて嬉しいです。型破りな自由奔放神父様を感じて頂けてありがとうございます笑 素敵なコメントありがとうございました！ (2021年2月13日 19時) (
レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、完結おめでとうございます。アポロ様どうしたらいいか解らなくなってたんですね。ちょっとツンデレ気味？智くんの神父様は、何にも縛られない智くんならではの素敵な神父様なんだろうなと納得です。潤くんも生まれ変わって、みんな幸せで良かったです。 (2021年2月9日 20時) (レス) id: d9af776466 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しゅり
| 作成日時：2021年1月19日 18時
