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カリカリと書き付ける音が止み、深い溜息と共にペンが置かれた
掛けていた眼鏡を外しながら、翔はゆっくりと扉の方を振り返る
下の工房に置ききれず、溢れている作品を保管している机に近づくと、新たに置かれた小包が目につく
他の郵便物と一緒に手に取ると、丁寧にその梱包を解き始めた
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がさがさと包みを開け、姿を現した絵画を見て、翔は感嘆の溜息を漏らした
「うん、綺麗・・・」
どこか懐かしい風景が描かれた絵画を抱きしめるその左手には、薄く火傷の跡が残る
「さて、本当にどこに飾ろうかな・・・」
困ったように呟くと同時
「翔さーん？コーヒー冷めちゃうんだけど！」
「はーい、今行くからー！」
大声で叫んで返事を返し、そっと絵画を机に置き直した
『郷愁の青 ー S.Ohno ー』
額縁に刻まれたタイトルを優しく撫で、また後でね、と手を振る
その口元には幸せそうな笑みが浮かんでいた
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まだ冬が始まったばかりのこの地では、雪も降ったり止んだりを繰り返す
雲間の切れ目から零れる太陽の陽射しは、やがて書斎にも差し込んだ
その光は無数にある硝子細工に乱反射し、色鮮やかな光の渦が巻き起こる
書斎の壁一面に飾られた同じ画家の絵画に、美しい光の筋が描かれていく
硝子製の薄い金魚鉢の中、その光の海に憧れるかのように、二匹の金魚はくるくると泳ぎ続けている
隣には、少しくたびれたうさぎのぬいぐるみが、不細工な顔で笑っていた
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suzurinrin(プロフ) - しゅりさん、新しいお話拝読させていただきました。切なくて胸がギュッとくるお話でしたが最後はいろんな想像が膨らみ温かな気持ちになりました。しゅりさんの創られるお話、本当に大好きです。ゆっくりで構いません。これからもどうか執筆 続けてください。待ってます (2019年9月7日 12時) (
レス) id: 358d000b2c (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - セツさん» セツさん、コメント頂きありがとうございます！素敵な感想を頂けて作者冥利に尽きます。 時間の余裕があれば、彼らのお話をまだまだ紡いでいきたいと思います。長くお待たせしてしまうかもですが、楽しみにして頂ければ幸いです。お立ち寄り頂き有難うございました！ (2019年9月6日 19時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - きよさん» 私も彼らのお話をまだまだ書いていきたいと思います。時間の余裕があれば続編or番外編も考えていますので、気長にお待ち頂ければ幸いです。 お立ち寄り頂きありがとうございました！これからも応援いただける様頑張ります！ (2019年9月6日 19時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、コメントありがとうございます！何度も読んで頂けて嬉しい限りです。他の作品にも足を運んで頂けてるなんて光栄です。私も普段コメント出来ない人なので、お気持ち分かります。笑 (2019年9月6日 19時) (レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、前回のコメント漢字が間違っていましたね。再開→再会でした(泣)恥ずかしいです。やはり何度読んでも切ないです。「雨宿り」のような続編、番外編、読みたくなります。なかなかコメントしないのにあつかましくて申し訳ないです。 (2019年9月6日 11時) (レス) id: 7f433b7b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゅり
| 作成日時：2019年9月5日 23時
