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『えー、何？邪魔なんだけど』
『早くどけよな、マジうざい』
『こんな事して注目浴びるのが楽しいんじゃない？ほら、今時の若い子って、何をやらかすか分かったもんじゃないから』
『無害そうな顔してるけど、こういう奴が一番危ないんだよな』
「っ、ぁ・・・」
立ち上がろうとするも、少しも言うことを聞かない身体
今日一日の無理が祟ったのか、僕の足はまるで棒切れになってしまったかのように固まってしまっていた
耳障りな言葉たちに、両手で頭を抱えてしまいたくなるのに、それさえも叶わない
どうしよう、どうすればいい？
焦れば焦るほど、息が上がり酸素が不足する
ガンガンと鳴り響きながら耳にこだまする言葉たちが、遠慮無しに僕の身体を切り裂く
視界が狭くなる
暗くなっていく
進むべき道が、見えなくる・・・
「翔！！」
ざわめきの中でも一際よく届いたその声は、不思議と僕の耳に馴染む
耳鳴りが一瞬で止み、周囲の音もクリアになる
ぐい、と力強く掴まれた腕の先から、じわり全身に広がる温もり
視界が一気に開け、薄墨色の甚平が目の前いっぱいに広がる
「大丈夫。行こう」
その言葉と同時に、色を失っていた視界が回復する
ぽつりぽつりと、ろうそくの先に火が灯るように、ほわんと暖かさが広がっていく
そっと腰に回された手が、座り込んだ僕の身体をゆっくりと抱き起こし
そのままきつく握られた左手が、力強い右手に引っ張られる
あんなに動く気配もなかった足が、前へ前へと進む
重なる既視感
僕は知っている
この優しい背中の後ろをじっと見つめながら、こうして手を引かれた記憶
あの時もそう、少しも動くことのできなかった身体は、不思議とこの温もりには素直に従った
このお祭り独特の高揚感も、耳元を駆け抜ける風の音も、全てが初めてではないと脳が叫ぶ
「じゅん、くん・・・」
ああ・・・
胸の奥にじんわりと、優しさが染みていく
右手で抱きしめたものが、かちゃりと小さく音を立てた
自分が今どこに向かっているのか、わからなくて立ち止まって
自分の進む道がどこに続くのか、見えなくって苦しくなって
だけど必ず、僕を救い出してくれる温もり
いつだって僕を見つけ出してくれる存在
闇の先に、路が見えた
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しゅり(プロフ) - ポン太さん» ポン太さん、コメントありがとうございました。私も大好きな作品なので、今でもこうして愛して頂けて作者冥利につきます。素敵な乾燥ありがとうございました！ (2021年8月30日 6時) (
レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
ポン太(プロフ) - しゅりさんはじめまして。今更ながらこちらのサイトに辿り着き読ませていただきました。…もう、感動の一言。ストーリーに凄く引き込まれました。泣いてしまいました（笑）このような素敵な作品に出会わせていただきありがとうございます…！ (2020年8月31日 23時) (レス) id: 487612dcba (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - くっきーさん» くっきーさん、素敵なコメントありがとうございました(*^^*) どこか芯のある作品、それを目指して書いてきたので、そう言っていただけると本当に嬉しいです！ 読んでいただき、ありがとうございました！！ (2017年4月11日 19時) (レス) id: afce0e0771 (このIDを非表示/違反報告)
くっきー(プロフ) - はじめまして。一気に読ませて頂いて、涙が止まりませんでした。繊細だけれど芯のある力強いお話。素敵な作品に出会えて幸せです。ありがとうございました！ (2017年4月9日 2時) (レス) id: d3adf69549 (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - はなさん» はなさん、コメントありがとうございました！この作品が、はなさんの中で特別な何かになれたのなら、こんなに嬉しいことはありません。勿体無いくらいのお言葉、ありがとうございます。また書く余裕ができたら、そちらでお会いできることを楽しみにしています(*^^*) (2017年4月6日 23時) (レス) id: afce0e0771 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゅり
| 作成日時：2017年3月12日 18時
