おまけ ページ46
【n度目のホワイトデー-前半】
ショッピングモールの中央に積み重ねられたお菓子たち、水色と白色のポップ。ショーケースの中身には完売の札が貼られている物も少なくない。
義理のふりをして宇津橋にチョコレートを渡して一ヶ月。今日はホワイトデー当日だった。
バレンタインの時に付き合っていた彼女には振られたらしい。でも今は別の彼女が居るというのだから、今日は暇ではないだろう。バレンタインになにももらってなくても、その人になにかあげるのであれば。
私にとっての今日は、冷蔵庫の卵が切れたから買い物に出ただけの、ただの土曜日だ。
宇津橋への思いを殺したくて、重たい愛を閉じ込めた、形だけ義理のチョコレート。あれのお返しなんて期待するだけ無駄だ。そもそも、義理のお返しをくれたところで悲しいだけで何も満たされない。
買い物袋を提げてマンションの前まで帰った時に、スマホを見ている宇津橋の姿が私の目に映った。
宇津橋は私の向かいのマンションに住んでいる。が、宇津橋の立っているのは私のマンションの前だ。
「宇津橋？なにしてんの」
「あ、お前。電話全然出んやん」
「ごめん買い物してて……え、私に用事？」
「これ」
差し出されたのは紙袋。中を覗くと、瓶に入ったパステルカラーのマシュマロだった。
「マシュマロだ」
「ホワイトデーやから」
「わざわざ届けてくれたんだ、ありがと」
ねぇ宇津橋、マシュマロをホワイトデーに贈る意味って知ってる？
宇津橋のことだから、わかってて渡してるんだろうね。
「私のこと好き？」
「嫌いやで」
何度かしたお決まりのやりとり。せめて友人としてくらいは好きだって言ってくれればいいのに。
それで満足できないのはわかりきっているけれど。
マシュマロって。クッキーとかよりよっぽど意味深だよ。宇津橋は私の好意にきっと気づいているし、その上で友人関係を強調していた。
宇津橋さぁ、じゃあなんでそんな目で私を見るの。なんで宇津橋はいつも悲しそうなの。ただの友人にする顔じゃない。
「それだけ、ほんならまた」
宇津橋、たくさん義理チョコ貰ってたけど、一軒ずつ訪ねるの？そうじゃないなら、私だけ特別だと言ってるのと同じだ。
隠すなら、もっと上手に隠してよ。
じゃないと、……好きだって言っちゃうよ。
きっと宇津橋は、ただいつもみたいに悲しそうな顔して、断るんだろうけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 372人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千白は山に住む(プロフ) - 凡人さん» ありがとうございます！私もお気に入りで、昔かいたものなのについ番外編を書いてしまいます！そう言っていだだけるのならここに更新しに来てよかったー！と思えます！ありがとうございました！ (2020年6月20日 9時) (
レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - bhさん» 長らくお返事できていなくてすみません！ありがとうございますー！ (2020年6月20日 9時) (レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
凡人(プロフ) - 更新されていてびっくりしました。私が本当に大好きなお話です...ありがとうございます！ (2020年6月5日 18時) (レス) id: 0a526fe040 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、これからも応援しております。 (2020年3月15日 0時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - 水澪恋さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました！あげて落とす仕様でしたが楽しんでいただけていたら本望です！ありがとうございます、今後もがんばります(*^^*) (2019年10月12日 20時) (レス) id: f80b5e4d2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
