大学1年生・秋 ページ5
「宇津橋本当私のこと嫌いだねぇ」
「せやぞ」
なのに、なんで送ってくれるんだろう。たまに優しいから、勝手にポジティブに捉えちゃうよ、いいの？なんて考えてしまう。
「なんかほら、ラーメンとか食べたくない？」
「うわ、ホンマそういうのあかんで」
「今更、ご飯くらいどうってことないでしょ？」
「いーや、俺は帰るね」
宇津橋に続いてコンビニに入る。おでんの香りが漂って、思わずそれにつられてしまう。
「おでん食べたくなる」
「わかる、これはずるい」
「あ、もう肉まんもある…宇津橋、」
半分食べない？と続けるはずだった言葉は、そのまま失われてしまった。かわりに、
「なに、その顔…」
という言葉が口を出た。宇津橋は、優しい表情で私を見ていた。たまに見せる、憂いを含んだ表情。その顔の理由が知りたくて、私は宇津橋に興味を持ったけれど、未だにその理由はわからないままだ。
「なんや？」
「いや、……ううん、なんでもない」
追及するのが、少し怖い。宇津橋が私を嫌いだという理由とか、その表情とか。きっと繋がっている気はするけれど、追及してしまうと、もうこの関係は崩れてしまう気がした。
今の、この中途半端で、曖昧で、幸せなままの関係で居られたら、それでいいのかもしれない。
そんなことを思うほどには、私も宇津橋を好いてしまっているらしい。
「肉まん食べるん？」
「あ、うーん、やめとく」
会計をする宇津橋を眺める。訊きたいことはたくさんある。でも、きっと訊いても曖昧な返事しか返ってこないだろう。
「もしかして今日って満月？」
「もうちょっと先やろ？」
「そういわれると、微妙に欠けてる気がしなくもないね。えー、今度お月見する？」
「なんでお前とせなあかんねん」
私の隣を歩く、宇津橋という変な男。相変わらず、私と関わる気はないという意思を表明してくる。
それなら、なんであんな顔を。
「宇津橋さぁ」
「ん」
ピザまんを頬張りながら、少しこっちを見る宇津橋が間抜けな顔で、また笑ってしまう。
「いや、そろそろ私にも慣れた？」
「ほういうこほ？」
「どういうこと？って言った？だから、嫌い嫌い言ってたでしょ」
「嫌いやで」
「なんでかなぁ、こんなにも仲良くなれたと思ったのに」
「お前の勘違いやな」
「残念」
冷たい風が吹く。私たちは、いつまでこうして居られるんだろうか。
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千白は山に住む(プロフ) - 凡人さん» ありがとうございます！私もお気に入りで、昔かいたものなのについ番外編を書いてしまいます！そう言っていだだけるのならここに更新しに来てよかったー！と思えます！ありがとうございました！ (2020年6月20日 9時) (
レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - bhさん» 長らくお返事できていなくてすみません！ありがとうございますー！ (2020年6月20日 9時) (レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
凡人(プロフ) - 更新されていてびっくりしました。私が本当に大好きなお話です...ありがとうございます！ (2020年6月5日 18時) (レス) id: 0a526fe040 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、これからも応援しております。 (2020年3月15日 0時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - 水澪恋さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました！あげて落とす仕様でしたが楽しんでいただけていたら本望です！ありがとうございます、今後もがんばります(*^^*) (2019年10月12日 20時) (レス) id: f80b5e4d2a (このIDを非表示/違反報告)
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