大学2年生・秋 ページ35
本来、彼女は僕のことを「鬱先生」と呼んでいた。
先日鍋をした日に、はっとした顔でそう呼ばれて、過去の記憶が蘇ったのか、と思ったが、そもそもあれは過去なのか。同一人物だから、前世、でもなくて。
今の彼女にとって、前回や前々回の出来事は起こっていない。だから勿論、記憶があるわけもなかった。
ゾムさんとあいつは、最近仲がいい。
今までの二回では、そこまで親しい様子はなかった。僕が狙っとったから、それが牽制になっていたのかもしれない。
とにかく、ゾムとあいつは部屋を行き来するくらいの仲らしい。幸せを願うと言いながら、内心動揺した。
俺じゃあかんってわかっとるのに、ゾムさんなら安心やな、そう言いたいのに、見たくないし聞きたくないと思う。全然幸せ願えてへんわ。
肌寒くなり、長袖の上に上着を着るようになってきた。
服の好みもまんまだ、その服、前も見たことがあるな。お気に入りだと言っていたから、それに合うような髪飾りをプレゼントした。
それ以来、その服のときは絶対つけてくるようになったっけ。だから、なんだか物足りなく感じたのか。……僕一人の思い出だ。
「あ、宇津橋」
すこし先からそう声をあげて、僕の元に近づいてくる。そのちょっと弾んだ声に、嬉しいと感じてしまってはいけない。
友人。こいつのことは、友人として見ろ。友人と友人がくっついたら、それは喜ばしいことやんか。
「お前か」
「そういえば宇津橋って、私のこと全然名前で呼ばないよね、私の名前知ってる？」
なんと呼んだらいいのか、正直わからない。
前みたいに呼び捨てで呼ぶと切なくなりそうで、だからといって苗字とかさん付けで呼ぶと、それもそれで切なくなりそうだ。どうあがいても絶望。
「知っとるけど、お前でええやろ」
「いいけど」
「ええんかい」
僕の向かいに座ると、また違う話をはじめる。
くだらない話。
平和な時間。
僕らは、このままでええ。
このままじゃないと、だめだ。
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千白は山に住む(プロフ) - 凡人さん» ありがとうございます！私もお気に入りで、昔かいたものなのについ番外編を書いてしまいます！そう言っていだだけるのならここに更新しに来てよかったー！と思えます！ありがとうございました！ (2020年6月20日 9時) (
レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - bhさん» 長らくお返事できていなくてすみません！ありがとうございますー！ (2020年6月20日 9時) (レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
凡人(プロフ) - 更新されていてびっくりしました。私が本当に大好きなお話です...ありがとうございます！ (2020年6月5日 18時) (レス) id: 0a526fe040 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、これからも応援しております。 (2020年3月15日 0時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - 水澪恋さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました！あげて落とす仕様でしたが楽しんでいただけていたら本望です！ありがとうございます、今後もがんばります(*^^*) (2019年10月12日 20時) (レス) id: f80b5e4d2a (このIDを非表示/違反報告)
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