独り ページ4
「えっと……わ、私も行くあてがなくて、
1人だとその、困るから……私とどこか行かない?」
正直言って、誰がこんな誘い方で乗ってくれるのだろうかと不思議で堪らない。
ナンパだとしてももう少しマシな言い方があったはずなのだ。
子供は感情の読めない目でしばらく私を見つめていたが、
やがて顔を背けて歩き出した。
(やっぱり駄目!?いやいや、諦めるな自分!)
自身に喝を入れて子供の後を追っていく。
あとから気づいたことだが、完全に不審者である。
「ねえ、親御さんはいないのかな?
ずっと1人で過ごしてるの?怪我はちゃんと治ってる?」
フラフラと遅い歩みを止めない子供に懸命に声をかける。
「わ、私のこと怪しい人に見えるよね!
たしかに今は怪しいかもしれないけど、その、
子供一人じゃ不便なことが多いんじゃない?
何か手伝えることがあれば、私が」
途端、子供は歩みを止めてこちらを振り返った。
ボソリと何かを呟く。
さすがに小さすぎて、そして距離があったために聞こえなかった私は
少しだけ近づいて声をかける。
「ごめんね、もう少し大きく言って──」
「──死にたい」
一瞬にして空気が凍った気がした。
こんな小さな子供から聞きたくなかった言葉だ。
(……自 殺したところを2回も見たから、少しは予想してたけど。実際に聞くと……)
私は視線を下に落として沈黙した。
次の言葉が見つからないのだ。
やがてしびれを切らしたのか、男の子は身をひるがえして再び歩き始めた。
もう一度呼び止める勇気などなかった。
私は結局、子供の後ろを黙ってついて行った。
その子がもう一度自らの命を絶つ瞬間を見るまで。
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ウェイウェイ | 作成日時:2024年3月5日 16時