これもきっと新しい形

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20××年11月







アメリカ公演を終え、次に日本公演を控えたワールドツアー中。

LAライブの翌日から続けて3日間のお休みをもらえたため、1日目はメンバー全員でテーマパークへ行き、近くのホテルに宿泊中。そして今日2日目、明日3日目は各々フリーで過ごすことになっている。

そしてそんな私は1日をのんびり過ごそうと、本だけを持って街へ繰り出し、一昨日この辺り出身のライブスタッフさんが教えてくれたカフェに来ている。

落ち着いた雰囲気の店内ではラジオから昔の音楽たちが聞こえてきて、朝早くに来たからなのだろうか、新聞を読むおじいさんや黙々と1人で勉強をしている学生など、ちらほらとしか人がいない。私も同じように飲み物をオーダーし、空いていた席に腰をかけて本を開く。こんなふうに自分の時間を過ごすのもいいな、と贅沢な気持ちだ。





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店内の雰囲気が少し変わったなとふと顔を上げると、フードメニューの乗ったトレーを持ち、周りを見渡す人が目に入った。壁にかかった時計を見るともうお昼時。通りで混んできたわけだと、急いでその場を片付けて店を後にする。没頭して読んでいたから気づかなかったけど、私もお腹が減ってきた。

さあ、このあとはどうしようか。

どうせならパンでも買って公園に入ればよかったな。それとも今からメンバーに連絡して、どこかに出かけようか。誰かしらはきっとホテルで暇をしているだろうし、連絡もつきそうだ。

そんなことをぼんやりと考えながら、ロサンゼルスの街を歩いていると、




「……Hey, excuse me」




突如後ろから呼びとめられ、咄嗟に振り向くと大きな人影。走ってきたのか上がった息を整えながら、その人は右手を差し出した。




「……これ、さっきの店で落とされました」


『あ…ほんとだ。ありがとうございます。気づきませんでした』




そしていつの間にか落としていたハンカチを受け取り、わざわざ追いかけてきて届けてくれるなんて、と優しい心遣いに胸が温かくなった。………のも束の間。




ん……？日本語？


しかもとても流暢だ。




英語で呼び止められたのに、その人はあまりにも流暢な日本語で話した。

私が日本人だと分かって日本語で話したのだろうか。…いやいや偶然か。もしかして日本の方なのか。

短い時間に色々な点と点を繋ぎ合わせようと、頭の中をフル回転させていると、上から声が降ってきて顔を上げる。




「……AのAさんですか？」







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