一話 ある青年との出会い。 ページ2
『ッ…!』
ここは…。
わたしは川沿いに流れ着いていた。
『ッ…!いたッ…!!』
身体中が痛い…!
とりあえず、歩こう…。
それから、わたしは、ずっと1日路地裏を歩いていた。
いつの間にか、表の道に出たいた。
目の前には、「毛利探偵事務所」と、書かれた建物があった。
私はただ、その建物をボーッと見ていた。
「あの、その建物に何か用事でも?」
後ろから声がして、振り返ると、知らない男の人がいた。二十代…前半…か?
『いえ、特にようはありません。』
私はその場を去ろうとした。
「どこへ行くのです?」
『…なぜそれを聞くのですか?』
男の人は険しい顔をして
「いえ、なんとなく。」
と答えた。
正直、どこに行こうとか、何も考えていなかった。
『どこに行くとか、考えていません。』
考える必要が無いから。
「貴女、名前は…?」
『…知らない。』
そう、私は昨日目を覚ましたが、それまでの記憶がなかった。だから、人と話すのを避けてずっと路地裏を歩いていた。
「…記憶は…」
『…わからない。』
「…。」
そこまで言うと、男の人は黙り込んだ。
もういいよね?
私は道を歩き出した。裸足で歩いているから、転がる石が痛い。
「待ってください。」
後ろから声がした。
『なんですか…。』
その男の人は、私を見てこういった。
「…行くところがないのでしたら、僕のところに来ませんか?」
…意味がわからなかった。
『何故?』
「見てるこっちがほっとけないんです。その痛々しい姿を。」
…そんなの知らない。
『…ほっといて…。』
「…安室透。」
『…?誰?』
すると、その人は微笑んで
「僕の名前です。」
と言った。
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作者名:最先端の消しゴム | 作者ホームページ:
作成日時:2016年6月10日 11時