エンカウント ページ21
「……これが俺達の云ってた対爆鉄扉だ」
パトロール中に敦と芥川に出逢ってしまったのが運の尽き、フョードルの顔も知らず雇われていた二人の男は、芥川の脅迫によって案内をさせられていた。
案内先は、指紋声紋の二重の認証がついた厳重な扉。この先に拠点があります、と云わんばかりの警戒っぷりだ。
手筈通り、敦は電子機器を操る異能者である花袋に連絡を取り、開錠を頼んだ。しかし、花袋の異能をもってしても開錠が困難だという。
「ならば開錠より敵の所在探しを優先せよ」
≪了解じゃあ、暫し待たれよ兄上殿≫
「誰が兄上殿だ殺すぞ」
月下獣、羅生門は攻撃系異能の為、どちらを使用しても扉の破壊は可能だが、異常を察知したウイルス異能者に逃げられてしまうだろう。それでは話にならないのだ。
鉄扉の生体認証機器に接続した端末を通して、花袋がウイルス異能者の情報の
五分ほど経っただろうか、花袋から通信が入った。この短時間で見つけ出すとは、流石は機械に特化した異能者である。
≪捉えたぞう!ウイルス異能者プシュキンの居場所だ!近いぞ!……実に近い、本当に直ぐ……君たちの近くじゃ。これは……≫
近い?
敦は立ち上がり、虎の聴覚を最大限まで研ぎ澄ませ、異能者の気配を探した。しかし周囲には誰もいない。足音どころか、声の反響の残滓すら聞こえない。まず確実に、半径十メートル内にいるのは敦、芥川、案内の男二人の四人だけである。
花袋が息をのむ音が、敦の耳に届いた。
≪……君達の背後、距離二メートル!≫
案内役の男の一人が芥川を撃った。
敦が咄嗟に芥川を引っ掴んで伏せると、銃弾が芥川の耳を掠めて飛んで行った。
「ヒキキッ、外したか。だがそれもよし!」
──探偵社社長とマフィア首領にウイルスの異能を掛けた張本人、アレクサンドル・プシュキンが其処にいた。
あらかじめ移動させておいたのか、傍にあったトロッコに飛び乗って、加速する。敦は其処が廃坑である事を思い出した。
「追うぞ」あれを逃せば、もう捕まえられる機会は無い。遠く線路の向こうへ走り去ったトロッコを見据えて敦が走る態勢を取った。
──芥川が音もなく倒れた。
敦が振り向くのと、芥川にウイルスの紋章が浮かび上がるのは同時であった。
彼等が今追っているのはウイルス異能者。
掠り傷さえあれば、相手を簡単に殺せるのである。
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ヒグレギ(プロフ) - 完結おめでとうございます!ひとつひとつ言葉選びが素敵な上、シリーズを通して予想もしなかった展開が何度も起こり、幾度となく楽しませていただきました。次回作も楽しみに待ってます。御自分のペースで頑張ってください! (2019年2月22日 21時) (携帯から) (レス) id: 298cf4baf3 (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - うわぁぁぁ質問ありがとうございます!一人も来なかったらどうしようかと思ってたところです……!承りました、後日回答させていただきます! (2018年11月1日 19時) (レス) id: 75dea9d01f (このIDを非表示/違反報告)
ねこ圭(プロフ) - 質問です。この作品を作ることになったきっかけはありますか?また、普段の夢主さんと中也さんの様子は端から見てどんな感じですか?(バカップルぽいのか、漫才コンビみたいなのかなど) 大した質問じゃなくてごめんなさいm(__)m (2018年10月31日 22時) (レス) id: d7aa474a6a (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - ※作者です。質問があればどんどん書いていってください!少なくとも2人は来てくれたら嬉しいな※ (2018年10月29日 22時) (レス) id: 75dea9d01f (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - 埴輪型竹輪さん» ありがとうございます!夢主とドストさん、そして中也さんの心情をこれからもお楽しみくださいませ。 (2018年6月10日 23時) (レス) id: d7453fd818 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕野きする | 作者ホームページ:http://http://commu.nosv.org/p/asubook/
作成日時:2018年6月3日 18時