鼠のスパイは混沌の中で焦燥に駆られる。【中原中也】【ドストエフスキー】

エリスのお願い ページ2

執務室で、此処最近の「異能力者連続殺人事件」に関する報告書を纏めていた時の事。

被害は全六件、そしてそのいずれにもポートマフィアは関与していない。当然と言えば当然だ、ポートマフィアの所業だったら私は今頃こんな報告書作っていない。
事件の発生場所を根拠に、牧師の潜伏先をキーボードで打ち込む。すると、とんとん、と控えめなノックが聞こえた。誰だろうか？中也さんは、自室に等しい此処に入るときにノックなどしない。首領なら、私の方が最上階に呼び出されるだろう。姐さんや樋口ちゃんしては音が小さい気がする。


「どうぞ」


と声を掛けると、ゆっくりと銀色のノブが回って扉が開いた。予想していた位置のずっと下に頭が見える。


「エリスさん！どうされました？」


最上階に籠もっている筈の彼女が此処に来るなど珍しい。
相変わらず、フランス人形のように大きく巻かれた艶のある金の髪。その上に、ドレスと同じルージュのリボンが飾られている。彼女がこちらに向かって歩く度に、裾を縁取る花のようなフリルがふわふわと揺れた。


「今からお買い物に行かない？お菓子が食べたいの！」

「判りました。それじゃ、済みませんがこれだけ……っと」


今しがた完成した報告書を保存し、首領と遊撃隊に同時送信する。本来は首領に一度見せてから他の部隊に回す物だけど、まあ間違ってる筈は無いし構わないだろう。


「よし、行きましょうか。首領は何処に？」

「リンタロウなら一番上よ。一軒だけお洋服屋さんに寄らせてくれって云ってたけど、そう云って何時も十軒くらい回るの」


店一軒当たりにかかる時間とこの辺りの洋服屋の位置を、頭の中で軽く計算する。


「じゃあ、取り敢えずは最上階に参りましょう」


私は軽くエリスさんの白い手を握った。
のんびり行こう、充分な時間を作るために。



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いいですね15巻、最高です。具体的に言えば推しが増えました。

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