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乾くんのほっぺたが、ほんのり赤い気がして。
変わった空気に、ドキリ、と心臓が鳴る。
あれ？
なんだろう。
これは、これは、もしかして。
乾「……名前で、呼んでもいいですか？」
「……へ？」
予想外の言葉に
素っ頓狂な声が出る。
乾「…いや！ほら、櫻井会長と同じ名字でわかりづらいし、相葉がAちゃんって呼んでるから、俺の中で櫻井さんってAちゃんで、……えっと、ごめん気持ち悪いな俺……」
乾くんが慌ててる。
口元を左手で隠してる。
慌てると、口元を隠すのが癖なのかな？
変な勘違いしちゃって恥ずかしいな！わたし！
おかしくなって笑っちゃう。
「うん。下の名前の方が、私も呼ばれ慣れてるし、うれしいな」
乾「…そう？」
「うん！」
乾「……Aちゃん」
「はーい」
また、乾くんが
目尻を下げて、へへ、って、とっても嬉しそうに笑った。
乾「……Aちゃん、また明日、」
「うん！また明日ね！乾くん」
バイバイ、って手を振って
バケツを持って歩き出す。
なんか楽しい人だなあ、乾くん。
ちらりと振り返ってみると、向こう側に走っていった乾くんもちょうどこっちを振り返ってて。
乾くんが、ぶんぶん大きく手を振った。
バケツを両手で持っちゃってたから、あ！と焦る。
「ばいばーい！」
乾「また明日！」
咄嗟に大きな声で叫んだわたし。
負けないくらい声の大きな乾くんに、また笑ってしまった。
結構時間経っちゃったなあ。
慌てて戻ろうと急ぎ足に前に向き直ると、ちょうど直線の美術室の扉の前に、大ちゃん。
「わ！」
智「Aおそい」
「ごめんね？絵具使いたかった？」
智「誰だぁ、あいつ」
「……乾くん？同じクラスの子」
智「ほー」
大ちゃんが珍しく人に興味を持ってる！
え！珍しい！
「乾くんのこと気になるの？なんかね、バスケ部なんだって」
智「ほー」
「なんかね、面白い人だよ」
智「ほー」
「クラスでもね、乾くんのこと好きな子、わたし二人も知ってる！」
智「ほー」
「なんかね、乾くんがモテるの分かる気がするね？話しやすいし」
智「仲いい」
「……わたしと？そうかな？そんな風に見えた？」
じーっと探る目。
しまった。近づきすぎ。
距離感距離感。
さりげなく美術室に入って、お話は終わり、の合図。
また向かい側同士で、黙って絵を描く。
大事な大事な大ちゃんとの時間。
ゆったり流れる大ちゃんとの時間。
ポツリと聞こえた『へんなの』ってつぶやきは、聞こえないふりをした。
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作者名：モナ
| 作成日時：2017年4月3日 22時
