君は僕に似ている【白河勝之】

18.ヘッドフォンとイヤホン ページ20

音楽を聴くこと。それが、私の夜の楽しみ。

音楽を聴く時は必ずといっていい程、イヤホンを付けている。

ヘッドフォン派かイヤホン派か。私はイヤホン派。




今夜もイヤホンで音楽を聴く。
音楽を聴きながら読書に没頭するのも悪くない。



今日読んでいるのは『星の王子さま』
大切なものは目には見えないと言って自ら命を絶った、故郷を失った王子のおはなし。




目には見えない大切なもの。
私にとって大切なものとは何だろうか？



隣にいる白河先輩は、ヘッドフォンを着けていた。
そういえば、深夜ラジオが好きとか何とか。
白河先輩はヘッドフォン派か…。







瞼が段々重くなり、眠くなって目を閉じようとすると、突然威勢のいい音がする。
その直後に、少し遅れてやってくる鈍い痛み。



「つっ…！」



壁に頭をぶつけたようで、頭がジリジリと痛む。
目尻にある涙を拭いつつ顔を上げると、白河先輩が不思議そうに覗き込んでいた。



「大丈夫？」


「だ、いじょうぶ…です…」



さっきの衝撃で外れたイヤホンを再びつけて、音楽の世界に没頭する。


白河先輩ものんびりしている。
それぞれ壁に寄りかかってくつろぐ。何も会話を交わさないけれども、何というか、安心感があった。



白河先輩が側にいてくれる。それだけで、心の何処かから安心できる。



要は信頼できるんだよな…。
そんな事を思いつつ、更に読書も再開。


『ぼくはあの花を愛していたんだ。 ただあの頃のぼくには、花を愛するということが、 どういうことなのかわからなかったんだ』


そんな言葉が心に引っ掛かった。
花を人に、ぼくを私の事に置き換えてみる。


私は。



人を愛することが分からない。


「愛」を知らない。


人を愛する事がどういう事なのかも。



無知、なのかな。無知と無関心は1番あってはならない事だと言われている。
何も知らない方がいいのか、秘密を知ってもいいのか。



だけど愛を知ったら、私は人を愛することが出来るのだろうか？



…



…眠くなってきた。
布団に入ろうと思ったけれども、眠くて身体が思うように動かない。



頭が重くなり、自然と白河先輩の肩に寄り添う。
そのまま身を委ねてしまう。








あたたかい。


こんなものなのかな…。






愛って何だろう？



そんな事も考えられないくらい、眠気が勝る。


そのまま目を閉じる。









愛されたい。
そんな願望を胸に。

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