君は僕に似ている【白河勝之】

29.イメチェン ページ32

鏡で自分の顔を見るなんて事、今まであまりやらなかった。

顔を洗ってから、鏡をじっと見つめる。

青い髪の毛に、それで隠れている顔の半分。
あと映っているのは、つり気味の凜とした目といったところか。


私はこんな顔をしていたんだ…。

正直、おしゃれとかそんなものには興味はないけれども…髪、変えてみようかな。


伸びていた前髪を少し切り、今まで目を隠していた髪の毛を耳にかけ、ピンで留める。

そうした後、改めて鏡を覗いてみる。


「…」


ずっと片目を隠し続けてきたけど、案外これも悪くないなと思った。

少し笑ってみると、鏡の向こうの私も微笑む。

自分を変えてみるのもいいかも、と初めて思った。



数分後。


「京華ちゃん！どうしたの？失恋でもしたの、ねぇ？？」


私を見た瞬間に、柊先輩は読んでいた雑誌を手から落とし、此方に飛んできた。


「いや…そんな事…」


だいぶ顔が引きつったが、笑顔で言えただろう。きっと。

まさかここまで驚かれるとは思わなかった。
成宮先輩にも。


「あ、京華……京華？…だよ…ね？？」

「失礼ですね、黒柳ですよ」

「マジで？！そっちの方がずっと可愛いじゃん！」


『可愛い』という言葉に顔がほんのり赤くなるのを感じる。

「照れないでよー！」と言ってどついてくる成宮先輩は放っておく。

その後やってきた樹にも、えぇ？！といった表情で見られた。勿論カルロス先輩にも。


「なんで突然」

「なんとなくって言ってるじゃないですか」

「もしかしてしらか」

「違います！別にそんなんじゃないですっ！！」

「かーわい」


途端、カルロス先輩がアホ声を発する。




視線の先に、白河先輩がいたから。

噂の恐ろしさが思い知らされた。なんでどうもこうも、タイミングが悪すぎるのか。


「あ、白河。ちょうどよかった！」

「何」

「見てよ白河！京華！！」


カルロス先輩の背後に隠れていたけど、成宮先輩によって引き剥がされる。

もう…目を合わせられない。


「京華がどうかしたの」

「やっだ白河ったら！鈍感なのー？京華がイメチェンしたんだよ！」

「…白河、先輩」

「いつも見てるから、それくらい分かる」


そう言って、私のもとへ来る。


「…似合ってる」

「え…あ…」


不意打ちのようなその言葉に、心がドキッとしたんだ。

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