Short Sleeper (ページ5)

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ココア〈與那城奨〉ページ5

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『與那城さん、お疲れ様です』

「…あぁAちゃんか。お疲れ様」

與那城さんのデスクに淹れたてのコーヒーを置く。
今まで画面と睨み合いっこしていた與那城さんは、私に気付くと柔らかい表情になった。

『今日も残業、ですか？』

「うん、明日までに終わらせておきたくて。」

『…毎日すごいですよね、見習わないとなって思います』

「そんなこと言って、Aちゃんも残業でしょ？」

『正解です』

ふふ、と笑い合って、私は與那城さんの斜め後ろのデスクについた。

與那城さんは、出来る男性だ。私と年齢は変わらないのに仕事も出来るし、女性社員には特に優しいし、リーダーシップもある。

社内でも一番なのではないか、というくらいには人気があって、よく告白もされているらしい。

頼れるだけじゃなくて、動作や声のトーンがセクシーなのも人気の理由だろう。実は私も、與那城さんに想いを寄せる一人だ。

期限が今日まででないものばかりなのに、残業をしてまでもその日中に終わらせてしまう與那城さん。

他の社員がいる時間帯は、あまり與那城さんと会話出来ないから、最近はわざと仕事を残して私も残業している。

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……終わった。

ぐっと伸びをして時計を見ると、定時から2時間ほど経っていた。思ったより早く終わって良かった。

後ろを見ると、電気はついているものの與那城さんの姿がない。あれ、お手洗いにでも行ったのかな？

與那城さんのデスクは綺麗に片付いている事から、きっと既に仕事が終わっていたんだろうと察した。
もしかして、待たせた？それなら申し訳ないなぁ…

とりあえず與那城さんが帰ってくる前に帰り支度だけしようと物を片付けていると、コトン、とデスクに置かれたマグカップ。

『與那城さん…』

「お疲れ様。すごい集中力だったから、声掛けるのも悪いかなと思って」

『いやいや全然。むしろ待たせてしまって申し訳ないです』

「気にしないで。俺が待ちたくて待ってたんだから」

熱々のココアを口に運ぶ。疲労した身体に、染み渡る。美味しい…
與那城さんは、私がコーヒーが苦手な事を知って、ココアを淹れてくれたみたいだ。そういうところにも、グッときてしまう。

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続→