恋人ごっこも明日まで 〈金城碧海〉 ページ13
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「おいで」
広げられた腕の中に身体を預ける。この温もりも、もう感じられなくなってしまうね
『碧海…』
「寂しいん？」
元々私たちはただの友達だった。こんな関係になったのは、私のせい。
元彼からヨリを戻したいという連絡が続いて、困り果てていた私。
『付き合っている人がいる』と話すと、『じゃあ連れてこい』なんて言われてどうしようか悩んでいた私に、優しく声をかけてくれたのが碧海だった。
『俺で良ければ協力すんで？』
そんな一言から、この関係が始まって。１日一緒にいるだけでは元彼は信じないのではないかということで、１ヶ月だけこの関係を続けることになった。
その１ヶ月が、明日で終わってしまうなんて。
最初は友達としてしか見てなかったのに、どうしてこんなに離れるのがつらいんだろう。
離れたくないって思ってしまうんだろう。
碧海は私のことを友達としてしか見てないのに。ただ、私の我儘に付き合ってくれているだけなのに。
『碧海は寂しくないの…？』
「…寂しくないと言ったら嘘になるな」
「また明日から独り身や〜」なんて笑う彼の笑顔にきゅんとしてしまう。もう、友達としてなんて見れない。
この１ヶ月、素敵な思い出ばかりだった。いつの間にか、碧海がずっと心のどこかにいて。
『ごめんね…』
「何で謝るん」
『いや…ずっと我儘に付き合わせたし振り回しちゃったなって』
「俺が提案したことなんやからAは何も言わなくてええねん」
私を抱き締めながら、優しく頭を撫でてくれるから目の奥がジーンと熱くなる。碧海の手、好きなんだよなあ。安心する…
『碧海』
「なに？」
『ありがとう』
「……こちらこそ、ありがとう」
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続
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作者名：すい | 作成日時：2020年4月28日 4時
