自分の生きる場所 (ページ32)

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No.32 ページ32

エガオ「てかさ、そのお腹…。」

A「あ、そうそう、もうすぐママになります。」

エガオ「うっそ誰との子！？其処ら辺の馬の骨だったら許さないっ！」

A「んー、彼処に隠れてる馬の骨。」

ぷんすかと怒るエガオに

「誰目線だよ」
と呆れながら彼の姿を探すと、案外早く見つかった。

探し相手は直ぐ近くの椅子に隠れていて、
私は構わず其方を指差す。

エガオ「ジュン！？」

ジョー「やっぱりか。」

居場所がバレたジュンは
身を小さくしながら此方へ歩み寄ってきた。

エガオは意外な相手に驚いていたが、
ジョーは予想通りだったようだ。

ジュン「ごめん、伝えてなくて。」

A「元々私が秘密にしてって言ってたしね。」

刑期を終えて外に出た時、
私は刑務所に入る前に作った戸籍の人物として生きるため、全てを1からやり直した。

血の繋がった親族は存在するが、
"私"にとっては他人も同然。
出所したことさえ伝えないようお願いした。

そして何とか働きながら生活をしていた。

毎日ギリギリの生活で、
刑務所に戻りたいと何度思ったことか。

赤房や青房のみんなと
連絡が取れないことを寂しく思っていた。

それでも外で生きていくには
頑張るしかないと半ば諦めていたある日、
外で初めて刑務所の仲間に会った。

それがジュン。

仕事を終えて疲れて帰っているなか、
突然後ろから声を掛けられて
振り向くと見知った顔が居たので驚いた。

ジュンは出所して直ぐに繋がった
と言うジョー達に伝えようとしたが、

何だかその時の私のままで
会いたくなかったから、秘密にしてもらっていた。

エガオ「一人称…。良かったA…。おめでとうっ！！」

私の一人称が変わったことに
気付いてくれたエガオ。

"僕"から"私"へ変えるのは
一番難しかったかもしれない。

生まれてから何十年と
変わらなかった一人称を変えたのだから。

エガオは私の境遇を
特に心配してくれていたから、とても嬉しそうだった。

そして再び抱き締められ、
私も思いっ切り抱き締め返した。

するとジョーもジュンも同じように
私達に抱き着いてくる。

この広い会場でお客さんが全員
パレードに目が行っているなか、

私達は再会の喜びを噛み締め合った。