12. どくどく ページ33
Mside
例の喧嘩は一件落着し、俺の部屋で飲む事になった。翔さんはお堅いスーツから部屋着に着替え、俺の部屋のインターホンを鳴らして入って来た。
そういう所は律儀なんだよな。
「やっぱり、潤の部屋は落ち着くー。一日、居ないだけで、新鮮な気持ちになるよー。」
そう言ってソファーを占領する。
この風景も相変わらずだな。
「今日はおつまみはスナック菓子で許して下さい。」
「うん、俺はそこまで意地悪じゃないからー。とりあえず、飲もー。」
「「乾杯！」」
ビールを開ける時の音は俺の疲れを癒してくれる。勿論、飲んだら最高だ。でも、不思議だよ。翔さんと乾杯しただけで疲れが吹き飛ぶんだ。
「ぷはー、染み渡るー。」
「ねぇ、飲み会はどうだったの？」
とりあえず、気になったから聞いてみた。正直、踏み込んではいけなそうな感じもするけど、そこは勇気を出した。
「端的に言えば、やっぱり、無理だった。俺の中でただ後輩と飲むだけと思っていたんだけど、いざ、席に着いたら女性が居て…沢山、絡まれて…。助けを求めても助けてくれなくて、とにかく、俺の調子を狂わせて…何一つとして面白くなかった。」
翔さんが惹かれる要素は無かった訳ね。
「…そうだったんだ。」
「だからこそ、潤とこうして宅飲みするのが楽しいって思えるのかも…。」
そう言ってスナック菓子を食べながら、ビールをぐびぐび飲んでいく。
いつもよりペースが早い。
だから、缶がどんどん減っていくし、話もヒートアップして盛り上がっていく。
「しょ、翔さん？」
気づけば、出来上がっていた。
俺も少し身体が熱くなって、珍しく酔いが早めに回ってきた。
「潤が女の子だったらぁー、ぜーったい、好きになってー、結婚してたなぁー。」
「翔さん…な、何言ってんの。冗談はよせって。」
翔さんが唇に手を当てながら、微笑んで言った。しかも、満更でも無い顔している。
それが妙に美しくて胸が高鳴った。
「じょーだん？そんなわけ、なーい。じゅんのことー、ひくっ、すきー。」
そう言って俺の隣に移動してくる。
そして、俺の手をゆっくり撫でる。
その手つきがいつもの翔さんとは異なる。
「じゅん、かおあかいね。よってる？」
「それはこっちの台詞だ。」
「かお、こっちむいて？そらさないのー。」
俺の頬に手を当て、強引にこっち向かせて、翔さんはじーっと俺を見た。
その後、
「んふふ、かわいいね。ずっと、ずっと、そばにいて？」
そして、唇を重ねた。
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作者名：山風無限 | 作成日時：2019年7月26日 1時
