第十一話 江川女史は十四歳の子供三人に同情された。 ページ27
その後一行が裏口から劇場に入り、地下への階段を降りたところで、福沢はとある女性に話しかけられた。
「それで? 遅刻の言い訳は?」
剣幕に乃風が面倒くさそうに眼を逸らし、上木が怯えたようにこっそりと山辺の陰に入った。
一方山辺は……これは心情を直接記した方が早いだろう。声と同時にばっと女性の顔を凝視し、
この言い方はもしやもしや支配人の方!! 名前忘れたけどイライラしている人!!
と思った。思いきり覚えがあった。
こんな見た目だったけな………ん? 鋭角逆三角形の眼鏡にスーツの強気な美人? ちょっと待ってそれっていけない漫画とかに出てくる男子生徒が一回は想像するとい………考えるの止めよう。
山辺の心中が騒がしくなる中、福沢が女性に返した。
「申し訳ない、江川殿」
「ま、いいわ。開演まではまだ間があるから、現場を確認しておいて頂戴」
女性――江川女史は言うと通路を歩きだした。一行もそれに続く。
まだまだ大人二人の会話は続くが、山辺はもう聞いていなかった。思考の中に潜水していた。
そうそう江川さんだ。それにしてもこの人乱歩さんに名前似てるよな、江戸川と江川だものな。何かの江戸川乱歩作品の登場人物なのかな。
此処で「山辺ちゃんの乱歩さんの呼び方江戸川さんじゃないの?」と思った方もいると思うので解説しておく、山辺は江戸川の事を心の中で乱歩さんと呼んでいる。
本当は実際にも乱歩さんと呼びたいが……できる事なら一度乱ポッポとも呼んでみたいのだが、初対面では失礼かと思い江戸川さんで通している。こんな時だけ常識人である。
江川さん苛々してるな。折角美人なn……ってこれじゃあ太宰さんみたいだな、太宰さんの事は好きだけどあんな軽薄なお方と一緒になりたくないな。格好良いけど。
山辺の目の前では今江川女史が警察についての文句を垂れ流しているが、此れも山辺は聞いていない。
それにしても苛々しているなあ。確か支配人なんてやりたくないんだっけ。照明とかの裏方がやりたいって乱歩さんが当ててたな。やりたくないものをやるのはストレス溜まるよね。可哀想に。
山辺が江川女史に同情し始めたころ、山辺の耳が不穏な単語を聞き取った。
「『天使が演者を、真の意味で死に至らしめるでしょう――V』。それから公演の日時と演目が書かれているわ。天使とかVとか、全く巫山戯た脅迫。どうせどこか他の劇場の営業妨害でしょう」
・→←第十話 遂に着いちゃったよ凄いよ感動だよおおおおおお。
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作者名:ミキノ・乃 | 作成日時:2020年6月19日 14時