【路地裏の百物語】浮世の沙汰は諸行無常【派生作品】 (ページ36)

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　地蔵は両手に持ったじゃがいもと玉ねぎの袋を持って、絲を待たせているお菓子売り場に行くのだがいなく。きょろきょろと周囲を見れば背後より「お地蔵さん？」との声が。

「！絲はん、ここにおれへんから自分どうされたんかと思いましたわ」
「ごめんね……。いと、お地蔵さんが頑張ってくれている間、ほかの品物も用意しておこうっと思って……」

　そう言った絲の手には小さなビニール袋が一つ。うっすらと透けて見える箱の側面からは500mlの牛乳らしきパッケージとと、あと細々とした数点。

「絲はん、もう買われたんです？」
「うん、……もしかして、ダメ……だった？」
「うーん、ダメってわけやありまへんけど……。もっと安いとこ……、まぁええか。自分も会計してきますさかい、絲はんは入り口付近で待っておいてください」
「わかった」

　次は牛乳が安いところとマッピングしていた地蔵だったのだが、不必要だったことになんともいえない気持ちを抱いていた。いや、ただ久し振りに主婦達主夫達と切磋琢磨できるかもという浪速魂に少し火がついてしまっただけであり、若干不完全燃焼してしまっただけである。
　レジに並んだ地蔵は店員のお姉さんに「買い物？僕、小さいのに偉いねー」というお言葉ににへらと笑い、青色のかわいいらしいキャラクターが描かれたシールを戦利品に貼ってもらったのちにリュックへ収納。あとは絲が待つスーパーマーケットの入り口へと向かった。

「絲はーん」
「あ、お地蔵さん……」

　外の自動ドアと内の自動ドアの間にあるベンチにて待っていた絲。相変わらず絲がいる空間だけはまるで窓から覗いた雪景色のように、静寂という言葉が思い浮かぶ。一瞬ぽけっと見入ってしまった地蔵だが、頭(かぶり)を振って駆け寄った。

「お待たせして堪忍な。ほな、戻りましょか絲はん」
「うん」
「あ、荷物持ちますよ？」
「……いいの？」
「自分力持ちやさかい、気にせんでええですよ。それにべっぴんさんな絲はんの荷物持ちとか大歓迎ですし」
「じゃあ……」

　そっと地蔵へと差し出すビニール袋を地蔵は笑顔で受け取った。約１キログラム程の重さだが地蔵の体重──重量と記載した方が正確か──に比べたら雀の涙ほどのため全然重くなく。リュックの中に入れていたじゃがいもとたまねぎ各２袋を他の材料が入っているビニール袋に移し変えて軽々と持った地蔵は絲をエスコート。
　二人仲良くボロ家の方へと歩みを進めたのである。