【路地裏の百物語】浮世の沙汰は諸行無常【派生作品】 (ページ34)

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　最近では冷たいお汁粉なるものも自動販売機で売っているため冷たいポタージュスープを作っていてもおかしくはない。と、謎の納得をした地蔵は絲に荷物持ちを申し出た。

「……いいの？」
「もちろんですわ。じゃがいもとか、ようさん買わあかんのでしょ？」
「……お地蔵さん、ありがとう」

　花が芽吹いた。雪解けにより地面から覗く小輪の花のように、絲は本の僅かながら口角を上げて笑う。
　いや。雪解けに見つけた花のようだと言ったが、どちらかと言えば冬の時期にだけ見ることが叶う雪の花の方が適切かもしれない。
　だがどちらとも言えることはそれは確かに愛らしくも美しいと言えることだろう。

「……べっぴんさんや」
「？あり、がとう？」

　不思議そうに小首を傾げた絲に対し、地蔵ははっとしたように買い物をと絲に促した。

「ちなみに何を買われるんです？」
「えっと……じゃがいもと、たまねぎと、生クリームと……」

　食材を一つ上げる毎に指を折る絲にふむふむと頷く地蔵だが、聞いていく内にとある結論に辿り着く。

「なぁ絲はん。もしかせんでも、食材全然買ってないちゃいます？」
「？コンソメスープの素(もと)だけ、買ったよ？」
「いやいや。他の主要な食材まだですやん!? 特にお芋さんがメインならそれ買わなあきまへんやん!?」
「うん、……だから今から買いに行くんだよ？」

　何故コンソメスープの素を買ったのなら他の食材は買わなかったのか。
　地蔵はそう尋ねたかったがもしかしなくとも事情があるのかもしれない。例えば、コストの問題等。物価があがってきているためスーパーマーケットをはしごすることは、あるにはある。たまたまコンソメスープの素が絲が最初に訪れたスーパーマーケットが安く、他の食材は高かったのかもしれない。
　意外と主婦してるのだと勝手に自己完結をした地蔵はならばと絲に申し出た。

「せやったら絲はん。タイムセール狙った方がお買い得ですわ」
「タイム、セール……？」
「せや。主婦達の戦場やけど、安く食材とかを入手可能なんですの」

　不思議そうに小首を傾げている絲。タイムセール等に行ってどうするのだろうか。特に必要な材料を購入できれば問題ないというのに。

「任せといてください。今日のタイムセールとか一日限定セールとか、全部頭ん中に情報詰め込んでますんで」

　ドヤ顔で言う地蔵に、絲は相変わらず不思議そうに自身より小さい地蔵を見下ろして小首を傾げたままだった。