記憶196 ページ7
その後、話をしに行った学園長も私がどちらを選んでも良いと言ってくれた。
手伝っている事務作業にミスが無いことや学園の人たちと良好な関係を築いていることを評価され、こちらを選んだ場合は正式に事務員として雇って貰えるというお話をされた。
しかも、このままここに住み続けて構わないとも。
まさに至れり尽くせりの待遇だ。
とりあえずこの話をしたのはその二人(と一匹)だけ。
確かな方法なのか不明だし、広めるような内容でもないので二人にもこの件については他言しないようお願いしてある。
庵から部屋に戻る途中の廊下から外を見ると、鮮やかなオレンジ色が山の向こうに隠れてしまっていた。
わずかに漏れた光が、あたりの風景を夕日色に染めている。
「何かあった?」
歩みを止めてボーッと外を眺めている私に山本さんは声をかけた。
「いえ……。ただ、綺麗な景色だなって」
どこぞの小説にでも出てきそうなありきたりな台詞。
だが、心からそう思った。
立ち止まったことに軽く謝罪をして歩き出す。
「今日の夕飯はなんでしょうか」
「カレーだって誰かが喜んでた気がするわ。辛いのは平気?」
「辛すぎるのは駄目ですけど、カレーは大好物です」
胡椒なんかの香辛料は外国との貿易で少しは入ってきていたとしても、カレーに使われるようなターメリックなんかはさすがになきだろう。
そもそも世界史として見てもカレーが存在していたのかすら微妙なところだ。
私の知っている歴史とは、何もかもが違う。
現実世界を度外視した設定に思わず吹き出した。
それに何かおかしなことでも言ったかと山本さんは尋ねてきた。
「いえ、いいえ。ただの思い出し笑いです」
納得したのかどうか分からない表情を見せたけれど、特に問題ではないと判断したのだろう。
彼女がそれ以上言及してくることはなかった。
私の元いた世界では誰でも簡単に美味しいカレーが作れてしまう素晴らしい発明品のカレールーがあったが、この世界はどうなのだろう。
正直なところカレーなんて人並み程度にしか好きではない。
しかし科学の進歩が成し遂げたカレールーの味とおばちゃんの作るカレーの味を比較するのを秘かに楽しみにして食堂へ向かった。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時