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「……っ! A!」
立花が呼びかけて、振り返った高坂。
声の主を確認した彼女は酷く驚いた。いるはずのない人を見たのだから当たり前だ。
「えっ……立花さん?」
立花も少女の声を聞いて安堵した。本物だ、間に合ったのだ、と。
しかしその姿を見て、あと少し遅れていたらと要らない不安が心を支配しそうになる。高坂は元の時代の制服姿。つまり、そういう事だった。
立花が一歩近付こうとする度に、一歩後ろへと足を進めて距離を保つAは裸足の立花を見て驚いた。
「足……ボロボロじゃないですか」
枝や草で傷を負っている立花の足はところどころ出血も見られた。
「……心配してくれるなら、もっと近くに来たらどうだ?」
走り続けて乱れていた息が整ってきて、立花はようやく口を開いた。
彼の提案にAはゆっくりと首を横に振った。
「駄目ですよ。''さようなら"って書きましたよね」
手の中でくしゃくしゃになっている紙を指さして悲しげに笑った。
「私の居場所は、ここじゃないんです」
「どうして」
ふらりと、今にも倒れそうな立花は再び高坂の方へと歩き出す。いけないと分かっていても好きな相手。拒むのは辛いし、自分が逃げ続けることで立花が倒れたらと思うと避けられなかった。
「どうして……」
「……っ」
詰められた距離。
抱き締められて、完全に逃げることが叶わなくなる。存在を確認するようにきつく抱き締める立花を突き飛ばそうとも思えなかった。
「どうして怒られなくて済むと思った?」
背中に回された手はいつの間にか高坂の両頬に伸びていて、そのまま思い切り彼女の頬を引っ張った。
「こうして見つけられたんだ、望み通りたっぷり叱ってやろう」
まるで玩具で遊ぶ子供のように楽しそうに頬を引っ張り続ける立花。痛さからか、それとも別の何かからか、Aは涙を流した。
「そ、そんなに痛くしたつもりはなかったんだが……やりすぎた、すまない」
今度は割れ物を扱うように優しく撫でた。その手に自身の手を重ねて、違うんですと涙で潤んだ瞳で立花をじっと見つめた。
「来てくれたことが嬉しくて、……好きになって良かったって、そう思って」
「……そうか」
何もおかしい事などないのに、二人は笑った。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時