空っぽを埋めるモノ５【RKRN】

＊ ページ41

【立花仙蔵様


この手紙を見つけてくれるのが立花さんだと信じてこれを残します。だって、そうじゃないと恥ずかしいので。



立花さんとの思い出は、よく私の心をかき乱していた。この一点に尽きます。



嫌いなら関わってこなければいいのに何故か突っかかってくるし、嫌に鋭いし、私が隠そうとしている事に気付くのは全部立花さんだし……正直苦手でした。



私に想いを伝えてくれた時もそうです。返事を先読みしているし、人の気持ちも知らないで私の事丸め込んじゃうし。




あと白い肌とか、長くて艶のある髪とか、私よりも女性的なそういう所もずっと羨ましかった。




本当に、本当に苦手でした。






苦手だったけれど、好きでした。



気付いて心配してくれる立花さんが、悩みを吹き飛ばしてくれる立花さんが、達観していていつも冷静な立花さんが、綺麗なくせにかっこいい立花さんが……好きです。




こればっかりは立花さんも知らなかったんじゃないですか？



最後の最後にあなたを驚かせる事が出来たでしょうか。



言い逃げなんて狡い真似、きっと怒っちゃいますね。怒られなくて済んでよかった……なんて、思えないけれど。



心の片隅で立花さんに好きな人がいた事、頭の片隅で立花さんを好きな人がいた事を覚えてくれていたら嬉しいです。


埃を被るくらい長い間忘れていてもいいので、いつか、そんなこともあったなと思い出してあげてください。


さようなら。


高坂A】


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



気付いたら走り出していた。



どこに行ったかなんて分からない。まだここにいるかも分からない。それでも、何もせずに呆然と時が過ぎるのを待っているなんて立花には出来なかった。




握り締められた立花宛ての手紙は握力と手汗でぐしゃぐしゃになっていたが、気にせずに校門を抜けた。

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