記憶190 ページ1
「生首フィギュアの片付けをしていたのか。すまない、あとは私が」
「なまくび」
穏やかでない言葉にごくりと喉が鳴る。
たしかに生首ではあるけれど。
動けずにいる私を他所に、立花さんは美しい所作で床に転がっている生首フィギュアを一つ持ち上げた。
「あ、私が任された仕事ですので気にしないでください。それより立花さんは授業があるのでは?」
授業終了の鐘はまだ鳴っていないので普通なら授業中のはずだ。
立花さんが持つそれを奪うように掴むが、相手も対抗するように力を入れたので二人で生首フィギュアを持つだけになった。
「い組……私と文次郎は実習だったのだ。早く終わったからここの片付けをしようと思ってな」
「ならお疲れでしょう。休んでいてください。ぱぱっと終わらせますから」
生首フィギュアを引き寄せよるため力を込めると、立花さんは諦めたのかぱっと手を離した。
よろめきながら後退すると、目の前には色白な左手。
あ、これ私から見ての左だから立花さんからすれば右手か。
「いたっ」
その右手に、デコピンをくらった。
いきなりなんだと言おうとすると、立花さんの顔が不安げに歪んでいるのが見えて、とてもそんなこと言えなくなってしまった。
「阿呆。休まなければならないのはお前の方だろうが。皆どれだけ心配したと思っているんだ」
デコピンのせいでジンジンと熱を持つ額を優しく親指でさすってくれる。
緊張のためか少し息がしずらくなり、恥ずかしさから下を向くと立花さんも手を離した。
「お前は日常に戻ったつもりかもしれないが、その一挙手一投足が負担になっているのではないかと……誰もがそう思っているのを、どうやら本人だけは知らないらしいな」
原因不明の何かで数日間目を覚まさなかった私。
軽く考えていたのは、当事者である私の方だったのかもしれない。
「……すみませんでした」
謝罪を呟けば「わかればいい」と、奥の棚へ生首フィギュアを置きに行った。
しかし山本さんの授業が終わるまで何もしないでいるというのも気が引けるので立花さんの手伝いでもしようと提案すると、すごい形相で睨まれた。
「……なら終わるまで話し相手になってくれ」
ため息混じりに言われ、これが彼なりの妥協案だと悟った。
「楽しい話ができなくても怒らないでくださいね?」
「私がそんなことで怒るようなやつ見えるか?」
冗談半分で頷くと再び額に激痛が走った。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時