記憶214 ページ25
(今日は遅いのね)
忍術学園くノ一教室で教鞭を執る山本シナは高坂Aの部屋の前に立っていた。普段なら自分から起きてきて朝の身支度を済ませた状態で挨拶を交わすのに、今日はそれが無いし声をかけても返事すらないのだ。
嫌な予感が彼女の頭をよぎった。
(まさか、また倒れて……)
数日前に町へ行った時、高坂は気を失って帰ってきた。それから三日間目を覚まさなかった。山本がそう考えるのは当然だった。
「ごめんなさい、Aちゃん開けるわね」
しかし、その予感は外れた。
(嘘……)
中には、誰にもいなかったのだ。それどころか少女の荷物も見当たらない。
そういう事か、と山本はある考えに至った。
(なにか一言くらいくれてもいいじゃない)
高坂のことは何かと気にかけていたつもりだし、一番最初に心を開いてくれたのではと自負していた面もあったのだ。
「……あら?」
机の上に何かあるのに気付いた。まっすぐ文字が書けるようにと薄く一定間隔で引かれている線。その線と線の間には見慣れた文字が敷き詰められていた。
(この紙、確かAちゃんの声が出なくなった時に使っていた……)
ハッとしてその紙を掴んだ。それは高坂Aから学園の者へ向けられた手紙だった。
宛名を見て読むのを止め、ある者の所へ山本は向かった。こんな時でも廊下を走る時の音は最小限に抑えられている。それがもう染み付いているのだ。
「学園長先生、山本です」
障子戸の前で正座をしてそう言うと、中から入りなさいと声がした。
中には忍犬のヘムヘム、そして山本が目的として来た学園長の大川平次渦正がおり、ヘムヘムが心配するような表情をしているのに対し、学園長の方は落ち着いていた。……まるで何があったのか分かっているかのように。
「これが、高坂Aさんの部屋に」
スっと先程部屋で見つけた手紙を差し出す。学園長は手紙を読むと、山本にもう読んだのかと聞いた。
「いえ、宛名を見た時に学園長に一番にお見せした方がいいと判断しました」
「そうか、なら山本先生も読みなさい」
手紙を覗き読みなどしなかったヘムヘムは何が起こったのか分からず、ソワソワと落ち着きがない。
そんなヘムヘムを気遣うことはどちらもせず、山本は手紙を読み始めた。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時