記憶212 ページ23
「夜中に出かけるの?」
小松田さんの所に行き貰ったばかりの外出届を渡した。その場で中を確認すると、外出時間に彼は引っかかったようで質問してきた。
私はそれを適当な嘘で誤魔化す。
「朝一番でないと手に入らない幻の食材を食べたいとかで、この時間になってしまったんです」
我ながら酷い嘘だ。
小松田さんも訝しげな目でこちらを見ている。しかしどんなに疑われてもこの紙自体は本物だし、学園長に確認を取られたとしても向こうはこちらの事情を把握してるので上手く話を合わせてくれるはずだ。
「まあいいか。確かに受け取りました」
そう言って小松田さんは外出届を懐にしまった。
「そっかあ、じゃあ明日の事務仕事は午前中は僕一人ですることになっちゃうね」
ズキンと胸が痛んだ。
小松田さんは私がそのままいなくなることを知らないのだからこう言うのも無理はない。しかし私にはそれがどこか皮肉に聞こえてしまった。
「そうなりますね。……準備があるのでこれで失礼します」
いたたまれなくなって、私は一目散にその場を離れた。
___________
部屋を片付けようと思った。
そうは言っても散らかってる所などはなかったので、自分の荷物をまとめたり、机が少し曲がっているような気がしたので数センチ動かしたり、荷物をまとめたり、忘れ物がないか確認して荷物をまとめたり……。
分かる通り、やることは特になかった。それでも動いていないと落ち着かなかったのだ。
「Aちゃん、いる?」
(伊作さん……?)
なんの用だろうと疑問に思いながら戸を開ける。
包帯で巻かれた足を庇うように片足重心で後ろ手に何か隠すようにして立っている伊作さん。
「どうかしたんですか?」
「うん、実はね……」
間を空けてもったいぶる伊作さん。切迫している感じではないので重苦しい内容ではなさそうだが。
「これ、受け取って貰えないかな」
差し出された手には綺麗な紫色の花。
「さっき渡せれば良かったんだけどそういう空気じゃなかったでしょ? ……実習中に見つけた花なんだけど少し萎びちゃったしあんな事があった後だから……」
嫌だったら捨てていいと言われたがせっかく持ってきてくれたものをそんな風には扱えない。
思えば贈り物なんてこの世界で初めて貰った。それが嬉しくて、名前も分からないその花を私は受け取った。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時