お母さん【太宰治】 ページ18
過去捏造注意
僕のお母さんは、僕にとって神様だった。
優しくて、綺麗で、心が美しくて、だけど少し儚げで。そんなお母さんが大好きだった。
寂しい時は頭を撫でてくれる。抱きしめてくれる。
そんなお母さんが大好きだったんだ。
ーーーーー
僕の父は最低な人だった。不倫もするわ暴力も振るう。持ち前の権力で金をむしり取る。そんな父だからお母さんは心を病んでしまった。
僕ももう既に生きている理由が分からなくなっていたけれど、お母さんを守る。其れが僕の生きる理由だったんだ。
僕はお母さんのいる精神病棟の病室に足を運ぶ。今日はとっておきのものを持ってきたんだ。
「お母さん……!!」
ガラガラと扉を開ける。
お母さんはぼぅっと窓の外を見ていたが、僕に気づくと儚げな笑顔で迎えた。
手首の包帯はまた増えていた。
「治……」
お母さんの瞳に僕が映る。僕に似なかったその瞳は誰よりも美しかった。だけれど、お母さんの身体と心はボロボロだという現実に気づき、やるせない気持ちになってしまった。
「お母さん……!聞いてっ……!!」
「ん。なあに?」
「これ……」
渡したのは手作りのブレスレット。そう、今日はお母さんの誕生日だったんだ。一応、家は良家ではあったものの、父親があんなんだから買いに行けるお金も余裕もなかった。
「これ……治が作ったの……??……大切にするね。ありがとう、治」
お母さんは僕の頭を撫でる。優しくて、心地良くて、すぐ眠ってしまいそう。
「お母さん……」
袖口から見える無数の傷と包帯。僕が幾ら傍にいようと、お母さんの希死念慮は無くならなかった。だけど、僕は何も話せなかった。話すことで病状が重くなってしまうんじゃないかと怖かった。だから僕は毎日此処に足を運ぶんだ。
生きて、なんて残酷な言葉。言える訳なかったんだ。
「ねえ治」
お母さんは僕に二百円を渡した。
「ブレスレットのお礼。私のことはいいから売店でジュースでも買ってきなさい」
僕は何となく違和感を覚えたが、一人になりたいのかなと自分で納得した。
「……うん。分かったよ。じゃあ、買ってくるね。お母さん」
「いってらっしゃい」
扉を閉める直前までお母さんは優しく笑みを浮かべていた。
ーーーーーー
持っていたジュース瓶が落ちて割れる。
そんなことはどうでもよかった。
「そ……んな。お母さん!!!」
お母さんは首を吊っていた。隠し持っていたタオルで。急いで脈を測ったがもう既に息絶えていた
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ハイド - リクエスト良いですか?男勝り&自由人間な夢主が太宰が浮気しているところを見たらをお願いします! (2020年3月4日 12時) (レス) id: c16d7a3dc3 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - リクエストしていいですか[主人公が妊娠中に編み物していたら][妊娠中の主人公が貧血で倒れたら]お願いします太宰さんと中也さん別に書いてくださいお願いします (2019年5月21日 6時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - わかりました( ̄▽ ̄;)がんばります (2019年4月19日 21時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆん(プロフ) - りんさん» なるべく、女体化などの現実味のないネタを書くのが苦手だったりします……得意なのはシリアスです (2019年4月19日 20時) (レス) id: 924108a693 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - ゆんゆんさん» わかりましたリクエストが終わってからまたリクエストしますダメなネタとかありますか? (2019年4月19日 18時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆんゆん | 作者ホームページ:http://touch.pixiv.net/member.php?id=17622667
作成日時:2017年5月3日 12時