個室番外 結 ページ39
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(またいつでも戻って来や?)
『んふふ、それまで潰れないでくださいよ?』
(Aちゃん居ないと一気に寂しくなるなぁ...)
『また来ますね』
今日はバイト最後の日。たった一年だけどお世話になったこの場所から去るのはとっても寂しい。
(神ちゃんにも早よ伝えや?)
『…はい』
実は神山さんにはまだ何も伝えていません。
何故私が3年で今の大学に編入したのかも、何故私がこのタイミングでバイトを辞めなければならないのかも。
[次会うときにお話しがあります。]
この前次のデートの話をしたときに送ったメッセージ。
改まって何やねん、なんて笑ってたけど、どうしても直接伝えたかった。
「んで?話ってなんなん?」
『私、来年からアメリカに行きます』
「...は?」
『インターンシップでアメリカの企業に行って、向こうの方の判断次第ではそのまま就職するつもりです。』
「ちょ、ちょっと待って急すぎひん?」
『ごめんなさい、言い出せなくて。でもずっと前から決まってたことで…だから、別れましょう!』
これが私が言いたかったこと。
どうしてもお別れは面と向かって笑顔でしたかった。
2年の春にアメリカに本社のある企業への就職を夢見て、そことの提携のある今の大学への編入を決めた。
おじさんのお店でもらったお給料は全てアメリカに行くためのお金。
「勝手すぎ。そんなん俺が納得すると思うてんの?」
『智洋さん、ううん、神山さん。私ね、かみやまさんのお仕事する姿が本当に大好きなんです。かっこいいな、素敵だなって思うんです。だから私もかっこよくお仕事する女性になりたいです。』
「…待ってちゃあかんの?」
『待ってなんて言えると思ってるんですか?』
「…ふっ、そやな。言えないよな。」
あぁ、笑顔でって思ってたのに。
「もう、泣くなら初めから強がるなや」
神山さんにぎゅっとされると堪えてたはずの涙が溢れて止まらない。
本当は嫌だった。別れたくなかった。ずっと一緒が良かった。でも、かみやまさんはいつだって仕事に真っ直ぐで真剣で、夢を追いかけてて。
そんな人の彼女が自分の夢を諦めるなんて絶対あり得ない。相応しくない。これはかみやまさんに相応しい女性になるための試練なんだって自分に言い聞かせてた。
「うん、別れよう。それでまた戻ってきたときにお互い成長していよう。俺ももっともっとデカい人間になるから。Aも、頑張っておいで。…迎えに行くから」
抱きしめる力が強くなるのを感じて、うんうんと頷いた。
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作者名:あんまん | 作成日時:2020年10月25日 19時