とある森の妄想族(短編集) (ページ18)

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思いがけず急展開(黄) ページ18

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「おはよう」

彼は多分気づいている。私が恋をしていることを。
他の同僚に混じって"おはようございます"と口に出す。

今日もめちゃくちゃかっこいい。
そのスーツも腕時計も凄く似合ってるし、髪型も素敵です。
髪色は染め直したんですか？それも素敵です。

どれも頭の中では組み立てられるのに声には出せない文章だらけ。

(中間さん今日も素敵です！)
「おー、ありがとう」
ほら、私、何してんの。早く後に続けばいいじゃんか。
「じゃ、換気とか諸々対策徹底してな」

あーあ、行っちゃった。

ずっとそうだ。入社してから3年間ずっと片思い。
対して個人的に会話をしたこともない。いつも大勢の中の1人。
こうやって中間さんに何もできないまま、いつの間にか中間さんの結婚式に参列することになるんだろうなあ。惨めな人生...。

『ちょっと総務行ってきます』
(はーい)

久々の出社も特に何もない。あと何時間で帰れるんだろう、そう思いながらエレベーターに乗り込むと、
「待って、俺も乗る」
と声がして閉まろうとするドアを綺麗な手が押さえる。

『あ、すみません。...中間さん何階ですか？』
「俺も総務。桐山に用があんねん」

2人きり。エレベーターで。
これはチャンスなんじゃないの？言え！何か！ほら！今日もかっこいいですね、とか今日も素敵ですね、とか！
『今日もすきです、え？』
「え？笑」

ち、ちがーーーーーう！！何をいきなり告白してるの！馬鹿馬鹿馬鹿！

『や、いや、その、"素敵です"って言おうとしたんです！！決してその、告白とか、その違います！あ、着きましたね！すみません先に降ります！失礼します！』

マシンガンのように一息で全て言い切りドアが開き切る前に急いで飛び出した。

あーもうどうしよう涙
『失礼します、山田さん資料取りに来ました』
(あー、ごめん。それ私じゃなくて桐山くんだわ！)

えぇ、よりによって今桐山さん...？
と桐山さんの席に視線をやるとやっぱり中間さんと話してるじゃん...。でもこの資料がないと仕事できないので取りにいく。

『あ、あのー、お話中すみません。桐山さん案件の資料...』
(あー！資料ね！ほいほい！)
『ありがとうございます、失礼しま「A」
っはい』
「廊下で待ってて」
『う、え、はい...』
(ひゅー！淳太くん男前ー！)
そんな桐山さんの冷やかしなんて1ミリも耳に入らないくらい私の背筋は凍った。逃げられないと悟った。

「そろそろ素直になりや？俺のこと、好きなんやろ？」

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