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9月に入り、溜まった有休を順番に消化することになって、珍しく金曜日に休みをもらった。

特に予定もなかったので、ゆっくり起きてダラダラ過ごしていたけれど、窓の外は抜けるような青空。せっかくの休みをこのまま終わらせるのが、勿体ないような気がして来た。

ちょうどトイレットペーパーの残りが少なくなっていたところ。他にも欲しい物がいくつかあるし、車で行ける少し遠くのショッピングモールまで、買い出しに出ることにした。


駅から続く道を走りながら、そういえば斎藤くんが練習に使っているスタジオはこの近くだったなと思い出す。
あの花火の夜以来、一か月以上顔を見ていないけど、練習頑張ってるんだろうか?

信号待ちのタイミングで目を向けた交差点の向こう側。
スタジオ前のガードレールに寄りかかって携帯電話を操作する、見覚えのある後ろ姿を見つけて、車を寄せた。

「斎藤くん。」
「あ、、。こんにちは。」

あれ?
いつもと同じように口元をゆるめてペコリと頭を下げるけど、なんだか今日は様子が違う。

「こんにちは。今から練習?」
「、、の予定だったんだけど、中止。
メンバーの1人が急に来れなくなっちゃって。」
「そうなんだ、急病とか?」
「や、、。何かそんなんでもないみたい。」
「ふうん?」

練習が無くなったのが余程残念なのか、いつもと比べて明らかに元気がない。

「もう帰るの?」
「うん。」
「他のメンバーと練習したりしないの?」
「オレはそれもアリかなって思ってとりあえずここまで来たんだけど、ドラム無しでやっても無駄だって、結局中止になっちゃった。」
「そっか。」
「ん。、、まあ、仕方ないよね。」

そう言って小さく笑ってみせるけど、
少し下がった両肩に『しょんぼり』の文字が乗っかっているのが見えるようで。

「ねえ、この後予定ないならさ、海にでも行く?」
「え?」

何だかそのままにしておけなくて、思わず誘いの言葉を口にしていた。

「ホラ、今日良い天気だしさ、ドライブしたらちょっとは気が晴れるかもよ。」
「、、、でも、何か用事があったんじゃないの?」
「んー、買い出しのつもりだったんだけど、まあ、スーパーは遅くまでやってるから戻ってからでも。
、、、で?どうする?ドライブする?」
「、、、行きたい。」
「OK。じゃあ乗って。」

私の強引な誘いに少しだけ考えて応じた斎藤くんは、前回同様、大荷物で後部座席に乗り込み、またもやタクシースタイルでのドライブが始まった。

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星宵(プロフ) - そらさん» はじめまして。嬉しい!ありがとうございます。本質は変わらないと思うけど、今みたいに責任ある立場ではない分、学生時代のギタボ氏は、より無邪気で感情に素直だといいなぁと思いながら書いてます。これからもよろしくお願いいたします。 (2020年10月24日 11時) (レス) id: 5d266fa98e (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - はじめまして。無邪気でかわいくて、すごく癒されてます(^^)ひっそり更新楽しみにしてます…無理なさらず(^^) (2020年10月21日 21時) (レス) id: 70b1605356 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星宵 | 作成日時:2020年10月13日 12時

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