検索窓
今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:37,026 hit

4-2 ページ33

幸い、私の心配は杞憂に終わり、緊張なんて忘れてしまうほどに、今夜のお料理は美味しかった。

素敵な大皿に盛られた美しい前菜、
ゆずの香りの上品な椀物に続いて、
運ばれてきたのはカニ刺しだ。

氷の上に彩り良く盛られた艶やかなカニの身に、思わず二人とも歓声を上げる。

「うわあ、うまそう!」
「美味しそうですねえ。」

つやつや光る身の先端を濃いめの醤油にそっと浸してひと口で。
濃厚な甘みが口の中に広がった。

「ん〜甘い〜、最高に美味しいですね!!」
「うん、めちゃくちゃ美味しい!」
「はあ、幸せ〜。」
「あはは、良い表情だなあ、、。
でもAちゃん、この後まだまだあるからね。」

「もう既に凄く幸せなんですけど、、、。
私、カニ料理の中ではカニ刺しが一番好きなんです。」
「そっかあ。俺は焼きガニが一番好きかなあ。」
「ああ、焼きガニ!焼きガニも美味しいですよね。」

斎藤さんも私もペロリと刺身を平らげ、次を待つ。

「このお店、落ち着いていてすごく良いお店ですね。」
「だよね。」
「教えてくれたのってお友達ですか?」
「友達じゃないよ。」

あまりにさらりと否定されて少し驚く。
じゃあ、お仕事の知り合いとかかな?
いわゆる『業界の人』って美味しいお店に詳しそうだし。

想像もつかない斎藤さんの人間関係に思いを巡らす私に、斎藤さんが答えを教えてくれた。
「バンドのメンバーに教えてもらったんだよね。」
「ああ!」
「そいつと俺、結構食べ物の好みが合ってさ。
打ち上げの飲み会でも、二人でこっそり白子ぽん酢とか追加注文したりすんの。」
「白子ぽん酢?」
「うん。皆がひととおり定番を注文した後に、こっそり追加しちゃうんだよね。」
そう言って、いたずらっぽく笑う。
そんな顔をすると、やっぱり年齢不詳だ。

「そいつがさあ、割と女子力高いっていうか、、
食へのこだわりも強くてかなりのグルメだから、オススメのお店を教えてもらったんだ。」
「じゃあ、その方のおかげで今夜はこんな美味しい思いができているんですね、ありがたいです!」

まだ見ぬメンバーさんに心の中で頭を下げる。

「俺も次会ったらお礼言わないとな〜。」
「メンバー同士仲良いんですね。」
「ん〜?ふふ。どうかな。」

何故だか斎藤さんははぐらかしたけど、その優しい顔を見れば答えなど丸わかりだった。

4-3→←4-1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (77 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
105人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

星宵(プロフ) - さばさん» はじめまして。嬉しい言葉をありがとうございます。決めていた所まで書くことができたので、ここからは少しゆっくりペースで、お付き合いが始まってからのあれこれを書きたいと思います。引き続きよろしくお願いします。 (2020年7月26日 7時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)
さば(プロフ) - はじめまして!いつも更新楽しみにしており、完結してしまうのは少し寂しいです、、、短編のお話楽しみにしてます!! (2020年7月25日 18時) (レス) id: 640aa79d81 (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みもりさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。そろそろ終盤なので、このままの勢いで進めて行きたいと思います。 (2020年7月16日 9時) (レス) id: 9647d822be (このIDを非表示/違反報告)
みもり - 更新ありがとうございます!!!今回も面白かったです!!! (2020年7月15日 21時) (レス) id: 1232f9590f (このIDを非表示/違反報告)
星宵(プロフ) - みちさん» はじめまして。更新が滞り返信も遅くなってしまい、失礼しました。良かったらまた読んでやってください。 (2020年7月6日 23時) (レス) id: 5c7677ac35 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:星宵 | 作成日時:2019年6月11日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。