トロイメライの贈り物 (ページ5)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:2,206 hit

女が語る"幸せな夢" ページ5

"彼は幸せな夢を見たのです！"

女の開口一番の言葉はそれだった
何ともお花畑なそれに一瞬だけ思考が止まった
黙っていれば女はベラベラと説明を始めた

『ええっと、彼個人の話は…お客さんのプライバシーに関わるから言い難いけど…あ、でももういないから…言ってもいいのでしょうか？』

勝手に疑問をうかべ最終的に質問されて
死人に口なしだ。と続きを話させた

『彼は奥様をこのシャボンディ諸島で天竜人に連れていかれたのです。よくある話ですが、余程奥様を愛されていたのでしょうね。10年以上待ってようやく人伝に聞いたのは奥様は聖地マリージョアで拷問の末亡くなられたそうです。その事実に絶望し未来が見えない彼は私に依頼をしたのです。夢を見せてくれ。と』

ああ、前半は胸糞悪いよくある話だと思った
だが問題は一番最後だ。

「夢とは具体的になんだ、やはりお前は能力者の類か」

能力者？と少し不思議な顔をしたあとにまた閃いたのか笑顔で"この不思議な力ですね！"と
言葉を知らない訳では無いが女は不思議な力とゆう方がしっくり来るらしい。

『夢とは、彼が見たい、心から願う景色や人、味わいたい感情。彼にとっての幸福に満ちた世界を私が手助けするのです！』

まるで神に祈る敬虔な信徒の様に女は胸の前で指を組み始めた。そして瞼を閉じて微笑んでいる
ああ、これは紛れもない善意なのだと男は察した。

「女、あの男は何故死んだ。お前の仕業か」

女は少し表情を曇らせたあと
小さな声で悲しみに満ちた声を零す

『稀に。とゆうかやはりいらっしゃるのです…
幸せ過ぎたが故に現実に戻った時に感覚が抜けきらなくて興奮状態になってしまう方が…制止しても止まらない彼らは…街並みや現状を段々思い出してきてしまい、最後…夢が覚めた瞬間…』

女は悔しいとゆうより哀れんでいるようで
実際は複雑な顔をしていた
幸せを、希望を失い明日を望まぬ彼等に

最後の賭けの様な偽りの夢

女は零すように言葉を紡いだ

だが男はそれを笑う