三百十八話 ページ18
「士郎くん……！！」
Aは思わず立ち上がった。声もなく吹雪がピッチに崩れ落ちたのが見えた。嫌な予感が全身を駆ける。円堂が、鬼道がそしてフィールドにいる選手たちが吹雪の元へ駆け寄る。だが吹雪は返事をしないようだ。円堂が肩を揺すぶっても反応が無いように見える。
「監督！これ以上は吹雪くんが……」
秋が監督に訴えかける。Aはズボンを握る。これ以上は吹雪くんが、と秋は言った。でも違うのではないか、これ以上どころかもうすでに彼の心は崩壊してしまっているかもしれない。チームが恐れていた自体がついに来てしまったのではないか、Aは息を呑む。流石に監督もこれ以上吹雪に無理をさせる気はないようで選手交代を叫んだ。
「選手交代！目金くん、吹雪くんと変わりなさい」
「は、はい！」
監督は吹雪の代わりにAではなく、目金を呼んだ。Aは妥当だと思った。単純な実力で言えば目金よりはAの方がピッチで動くことができる。圧倒的に運動神経に優れているのはAだ。だがフォワードの経験はほとんどない、そして目金は元々フォワード。どちらを起用するかははっきりしている。
「Aさん」
「……！」
突然監督に名を呼ばれてAは監督を見上げる。監督はいつものクールな様子に見えたが、少し表情からは焦りが伺えるように思えた。
「吹雪くんをお願い」
監督がAに命じる、Aは黙ってうなずいた。そして両脇から吹雪を抱え、ベンチへと連れてきた鬼道と円堂が彼を座らせるのを見届けた。Aは屈んで吹雪の顔を覗きこむ。思わず息が詰まった。
死んだような顔をしている、この表現にこれほど相応しい顔があるだろうか。そんな表情を吹雪はしていた。瞳は光なく、何も映していない。焦点も合わなかった。士郎くん、と小声で吹雪を呼んでみても返事はない。
「吹雪、ここで見ていてくれ。俺たちみんなでお前の分まで戦い抜く」
円堂が吹雪を見ながら宣言する。Aは吹雪の両手をそっと自分の手で包んだ。いつになく冷たい吹雪の手。まるで死んでしまったように……。
「士郎くん……」
Aは吹雪の手を握る。Aにはそれしかできなかった。
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ぴろ - 共依存気味の二人の関係が大好きです。またいつかやすけさんの書く作品が読めたら嬉しいです。その時は本として手元に残しておきたいです。長くなってしまい申し訳ありません。やすけさんのご健康をお祈り申し上げます。 (2023年3月12日 19時) (
レス) id: 450fb76435 (このIDを非表示/違反報告)
ぴろ - やすけさん初めまして。私は1年ほど前別サイトでこの作品に出会いやすけさんの書く風丸くんにとても惹かれました。当時の感動をお伝えしたいと思いますコメントさせていただきました。穏やかで思考深い主人公が大好きでした。 (2023年3月12日 19時) (レス) id: 450fb76435 (このIDを非表示/違反報告)
Rai - 初めまして今更すみません私はこの作品シリーズ読みましたもし参加可能でしたら来てくれた嬉しいですその他作品OKです「https://uranai.nosv.org/u.php/event/kouooue/」イベントこんな感じです (2020年8月29日 15時) (レス) id: 882913bd82 (このIDを非表示/違反報告)
やすけ(プロフ) - 麻衣蘭さん» 麻衣蘭ちゃん、私こそ前のレス返してなくてごめんよー！ありがとう、そう言って貰えて嬉しいよ！これからも頑張るからどうぞよろしくお願いします！ (2019年8月7日 20時) (レス) id: 605d7b732a (このIDを非表示/違反報告)
麻衣蘭(プロフ) - やっちゃん、全然コメントできなくてごめんー！そして続編おめでとう！コメント出来ないこと多いかもしれないけど、やっちゃんの作品はずっと好きだから！大好き！勿論やっちゃんも好きよ(急に)更新頑張って！これからも応援してる！ (2019年8月4日 16時) (レス) id: 59f2026080 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やすけ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/koikaze_adv
作成日時：2019年6月23日 14時
