▼ ページ26
．
河村の次にやって来たのは福良だった。
彼は河村とは違って得体の知れない怪しげな薬( ただの風邪薬 )を持ってくることはなく、代わりに巷で有名なお店の紙袋を持ってやってきた。
中にはお嬢様の大好物なプリン。
それを知ったお嬢様の起き上がり速度はマッハであった。
「え！このプリンって今ネットでバズってる幻のプリンじゃん！」
「あれ、山本も欲しかったの？言ってくれれば買ってきたのに」
「それこそ言ってくれればお願いしたのに！」
胸にクッションを抱き、川上が開け終わるのをまだかまだかと待つお嬢様。
その横では「 どれくらい並んだんですか？ 」「 三時間 」「 幻のプリンすご…… 」なんて会話が繰り広げられていたが、目の前のプリンに歓喜するお嬢様が知るよしもなく。
普段ならにこやかな笑顔で実は三時間並んだことを強調する福良だが、今日ばかりは真っ赤な顔で美味しい美味しいと食べるお嬢様を、ただ静かに見守っていた。
生意気なお嬢様も、今日ばかりはただの子供である。
「お嬢！あんたなにおバカのくせして風邪ひいてんのよ！ほんと大丈夫？」
「須貝、一言余計よ。殴って良いかしら？」
「良いわけあるか。まぁでも、そんだけ減らず口叩けんなら大丈夫やな」
六人目となる福良の次は言わずもがな須貝だった。
彼は特にお見舞いの品と言える物は持ってきていないが、強いて言うなら、尽きることの知らない溢れんばかりの元気を抱えてやって来た。
大きな須貝の手がプリンを食べ終わったお嬢様の頭に添えられる。
もう何年も一緒に居る妹のような存在に気を遣うなんてことはしない。
なんの躊躇いも無く彼はその大きな手でお嬢様の髪をグシャグシャとかき混ぜると、にっと笑って見せた。
お嬢様は非常に不機嫌そうだが、須貝は知らぬ存ぜぬである。
「……この髪型どうしてくれるのよ」
「似合ってるし良いんじゃない？Aにぴったりじゃん」
「河村。あんたの部屋取り壊すわよ」
バチバチ、バチバチ。
無意味な火種を飛ばすお嬢様と河村を山本が懸命に宥めていると、廊下からは「 お嬢様〜 」というゆる〜い声が聞こえてきた。
▶
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 643人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます！この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです！ (2021年3月30日 17時) (
レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして（といっても覚えてないと思いますが…）今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか？紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか？ (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです！お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます！普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます！ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います！ (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
