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そして山本。
彼もまた他の面でも才能を発揮しているが、武道での成績が最も良かったため、お嬢様の護衛役を任されたのだ。
見た目的には小柄なのでナメられやすいが、誰一人として、そんな彼に勝てたものは居ない。
温厚な彼を怒らせたが最後。
その後のことはご想像にお任せする。
「A、お粥作ってきたで。食べれる?」
「あ、川上……」
すると、噂をすればなんとやら。
お嬢様が風邪でふせっていることを聞き付けてきたのか、執事兼ここの料理長である川上が、珍しくお嬢様の部屋に直接料理を届けに来た。
基本、食堂の警備も兼ねている彼は、あまりキッチン奥の自室から出てこない。
だが流石にお嬢様が風邪となれば見舞いに来ないわけには行かなかったのだろう。
彼の手には豪華な装飾の施された銀製のトレイと、そんなトレイに不釣り合いな、和風の土鍋があった。
「おかゆ、たべる……」
「ん。ならここ置いとくで」
「やだ。川上も居て」
「今日はいつになくワガママやな」
サイドテーブルにトレイを置くなり、そそくさと出ていこうとする川上の服を、そっとお嬢様が掴む。
その手は簡単に振りほどける程に弱々しく、けれど何故か、簡単に振りほどけないなにかがあった。
最初こそ悩んでいた川上だが、近くに居た伊沢に「 まぁ、今日くらい良いじゃねぇか。調味料とかの検査は須貝さんがやってくれるだろうし 」と説得されたことによって、徐にお嬢様のベッドへ腰を下ろした。
さぁここからは( も )お見舞いラッシュ。
例えバカとは言え、真剣にお嬢様を慕っている執事達が、この緊急事態を聞き逃すはずがないのだ。
次に来たのは河村だった。
彼はひょこっとドアの隙間から顔を覗かせると、なにやら怪しげな薬をちらつかせてきた。
なんでも、飲んであら不思議!風邪が一秒で完治する薬らしい。
「そんな怪しい薬飲ませられるか!!」
案の定伊沢に叩きおとされた。
「あー僕の一週間の成果が……」
「尚更ダメだわ!!」
まぁ文言こそ怪しげだが、彼が言っているのは単なる理論上の話だ。
実際の効果はただの風邪薬と差異はない。それは彼自身が飲んで検証済みである。
ただちょーっと、大袈裟に言っただけ。
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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます!この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです! (2021年3月30日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして(といっても覚えてないと思いますが…)今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか?紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか? (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです!お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます!普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます!ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
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