【Q】うちのお嬢様【all】

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「伊沢さん！！お嬢様が風邪引いたって本当ですか？！」

「山本うるせぇ！静かにしろ！」

「……伊沢、うるさい……けほ……」

「あ、ごめん」





　伊沢に続いてお嬢様の部屋にやって来たのは、山本祥彰。

　主にお嬢様の送迎を担当している執事で、最近一番お嬢様と行動を共にしているのは、恐らく彼じゃないだろうか。



　そんな彼は伊沢に咎められたことも忘れてドタドタとお嬢様の傍に駆け寄ると、先ほどの伊沢と同じく、





「もう！なんで僕のお迎え待たないの……！」





　とおバカなお嬢様を叱りつける。

　その姿はまさに、いたずらをしてしまった子供を叱りつける母親である。


　身長も含め。





「だって……」

「だってじゃありません！」

「…………ごめんなさい」





　プリプリ、という表現が最適な怒り方をする山本だが、心身ともに弱っているお嬢様にとっては、それは本気のお叱りのように見えたのだろう。

　素直に反省すると、山本は安堵したように息を吐き、ポンポンとお嬢様の頭を撫でた。


　その手つきは、過去にお嬢様を襲おうとした不届きものを蹴散らした人間のものとは思えないほど、優しい手つきであった。






　今でこそこんなにも優しい執事だが、そんな子犬系の彼がお嬢様の護衛を任されるのには、やはりそれなりの訳がある。




　まず大前提にだが、ここの執事は基本、一通りのことを経験した上で、それぞれにあった役割が割り当てられている。



　例えば川上。

　彼は勉学の方面でも多彩な才能を発揮しているが、執事の中で最も料理の腕が立つため、食堂の番を任された。

　本来ならば専属の料理人を雇えば良いところなのだが、過去に料理人が毒を盛る事件が発生して以来、信頼できる人間しかキッチンには入れないのである。



　例えば河村。

　しょっちゅうお嬢様に「 引きこもり！ 」と言われている彼だが、実はこれでも武術は一通り心得ている。

　だが彼の場合は自室で事務仕事が一番向いていたので、滅多に外には出ないのである。


　因みに過去にはお嬢様にナンパする輩を颯爽と追い払ったりもしたのだが、その話はまた機会があるときにでもしよう。









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