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「な、な……っ」
「え、なに。どしたの。そんな赤くなって」
「っ、―――このバカ!アンタなんかもうクビよ!クビ!!」
「えぇえ?!そんな急に?!?ちょっと待ってよ俺ここクビになったらどこで働けば良いの?!?ねぇちょっと?!?」
「知らないわよこのバカ!!」
なにがそんなにも逆鱗に触れたのか。
お嬢様は肩をプリプリ怒らせながら食堂の扉を開けると、いつもより乱暴に閉めて出ていってしまった。
恐らくクビは嘘だと思うのだが、それにしたって怒りすぎだろう。
俺に途中で助けられたのがそんなに癪だった?
暫く訳も分からず悶々としながら、使った食器を丁寧に洗い、元あった食器棚に一つ一つ戻す。
その間も頭の中を占領するのはAのあの真っ赤な顔で、考えても考えても答えが浮かばない。
「あぁ、こうちゃん。まだ居ったん」
するとそこへ、食堂を一人で管理している川上さんが顔を覗かせに来た。
時計を見るともう彼が夕食を作り始める時間帯で、そんなにも長い時間悩んでいたのかと自分で自分に驚愕してしまった。
「あ、川上さん。今日キッチン使わせてもらってありがとうございました」
「まぁ、流石に土下座までされたらな」
そう言って彼は壁にかけてあるエプロンを手に取り、慣れた手つきで身に纏っていく。
これ以上ここに居座っても邪魔になるだけだろう。
用が済んだ俺がそそくさとキッチンを出ていこうとすると、川上さんが俺の顔を見てなにかに気づいたように呼び止めた。
「こうちゃん、口紅ついとるで、ここ」
「え?口紅?」
「化粧に目覚めたんなら志賀のとこ行きな。あいつ上手いから、まじで」
なにやら優しい笑顔を向けられたが、あれはどういう笑みなんだ一体。
それに、俺は口紅を塗った記憶なんてない。
口紅がつくような状況と言ったら……
『っ、このバカ!アンタなんかもうクビよ!クビ!!』
……ははーん、なるほど。そういうことか。
「ふふっ、やっぱ子供だな」
―――間接キスごときで赤くなるなんて、まだまだお子ちゃまですね、お嬢様。
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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます!この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです! (2021年3月30日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして(といっても覚えてないと思いますが…)今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか?紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか? (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです!お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます!普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます!ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
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