百話 ページ3
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今日も変わらない朝。
静かな部屋。
窓の外では大きな虫が悠々と飛んでいる。
「飛びたいなぁ‥」
ため息混じりに車イスを視界に写す。
ベッド脇に座り、足を揺らして。
水面に触れるように床に爪先を落として。
足裏に床を感じて、体重を乗せる。
少しだけふくらはぎがピリピリするけれど。
「‥よし」
扉が開けられた。
今日来てくれたのはクラウスだった。
「クラウス!来てくれたのね」
ク「あぁ、調子はどうかねA。あの時の戦闘は壮絶なものだったろう?」
「大丈夫よ、もう終わったもの。ちゃんと宣言通りよ」
に、と微笑むと、クラウスは私を外に連れ出した。
まだ歩き慣れない私にペースを合わせて、私とクラウスは病院前のベンチに座った。
「ありがとう、クラウス」
クラウスから買ってきたであろうホットミルクを受け取り、口に含んだ。
あの時に見た空は、既に霧に覆われ、街は何事もなかったかのように動いていた。
ク「私は、何も知らずに戦っていたのだな」
「‥教えてなくてごめんね。でも、 スティーブンには、少し話していたの」
彼の名を口に出して、首の包帯が締め付けられた気がした。
ク「スティーブンは‥今出張が多くて忙しい。当分は此方に来れないだろう」
大丈夫。と返して、手に持っていたコップに圧をかけた。
これは、哀しみだろうか、怒りだろうか、後悔だろうか。
「多分、もうそろそろ退院できるはずだから。歩けるし、明日には走れるし、既にちゃんと声も出るし‥」
ク「‥空へは行けるのかね?」
クラウスは私の瞳に問いかけた。
「確実ではないけど、きっと飛べるわ。
だって守護天使だもの」
残りのミルクを飲み干して、クラウスに答えた。
飛べるかな。
飛びたいな。
飛ばなくちゃ、街を守れないな。
私の中に、落とし込んだ。
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アンネ - 主ちゃんの心とかスティーブンさんの想いとかがとてもわかりやすくて面白かったです!これからも活動頑張ってください! (2019年3月9日 17時) (レス) id: 67a1c3a937 (このIDを非表示/違反報告)
鈴巴 - 主ちゃんが仲間と一緒にいて少しずつ、でも大きく成長していくのが読んでいてとても楽しかったです!これからも活動頑張って下さい!(^▽^)/ (2018年6月16日 22時) (レス) id: ad3d79f394 (このIDを非表示/違反報告)
ししょー(プロフ) - 心の雨と虹の空@現在低浮上ぎみさん» ご指摘ありがとうございます。大変失礼しました。 (2018年2月9日 21時) (レス) id: 23ac3f6a39 (このIDを非表示/違反報告)
心の雨と虹の空@現在低浮上ぎみ(プロフ) - オリジナルフラグ、外してください。 (2018年2月9日 20時) (レス) id: 469d2368ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ししょー | 作成日時:2018年2月9日 20時