兄妹離れは なかなかできないもの 六 終 ページ8
「修行に出る前に、九兵衛君が私より強くなったら彼の手を取る約束をしたんだよ」
Aは思い出して目を伏せる。
(まさか……その手を取るって言うのが「姉妹になる」形だとは思ってなかったけど)
黙って聞いていた戦が、ちょっと待てと一言入れる
「Aは俺の家の養子に入って今は俺の義妹だ。そっちの養子に重複しては入れんぞ」
「簡単な話だよ……君たちが縁を切れば良い」
「え」
「は……?」
Aは九兵衛の発言に驚き、戦がピキッと額に青筋を浮かべた。
しかしキレやすい彼とはいえ、これまでの表情とは少し違っていて、その目には確実な憤怒があった。
「最近Aと会って、しかもすぐに消えたポッと出のテメーのために……二十年も一緒にいた妹と縁切りなんか……するわけねーだろォが、バァーカ」
戦は静かに怒りを放ち、九兵衛に向かって中指を立てた。
普段の様子と少し違う彼は、土方から見ても本気で苛立っているのがわかる。
「妹を相当大事にしているんだね」
「当たり前だ。俺がどんだけAを気にかけてると思って」
「でも、その大事な妹を君は、ちゃんと守れているのかい?」
九兵衛は戦の言葉を遮って質問を投げかけた。
「はァ?」
「知り合いから聞いたよ。最近、Aが病院に運ばれたり怪我をすることが多くなってるんだって?」
「!九兵衛君それはっ」
「それを聞くに君は、大事な妹を守れていないと思うけど」
「ッ……!」
Aが弁解をしようとする前に九兵衛が言い放った。
戦は反論できずにいた
実際にAは無茶をするようになり、多く怪我をしてきている
それを兄である彼は止められずにいた
しかしA自身は、そのことに関して自分の責任だと思っている。
誰に守られるでもなく、自分は自分で守るべきだと思っていた。
九兵衛の発言に、Aは表情を曇らせる。
少し眉を寄せて口を開いた。
「九兵衛君。誓いの条件はまだ、結果の出ていない不明確な状態のままだよ」
九兵衛の手を取るという誓いの条件は「九兵衛がAより強くなる」というもの。
それはまだ、明確にされていない。
つまり彼女の発言が意味するところは――
「戦って決めよう、九兵衛君」
「君が私より強くなったのか、君が私を護れるのか。その刀で、はっきりさせよう」
Aの赤い瞳には強い意志が動いている。
九兵衛は驚いて目を見開くが、フッと笑った。
「ええ、受けて立ちますよ……先生」
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刹那*桜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!! (2022年12月27日 20時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメ失礼します!! めっちゃ面白いです!! これからも頑張ってください! (2022年12月26日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - あたりんさん» ありがとうございます!! (2022年11月20日 0時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年11月14日 16時) (レス) id: c0f0373936 (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - 花香さん» コメントありがとうございます!9個もあって長いですなか一気に読んでいただきありがとうございます!!わりと読みづらい所もあるかと思いますが好みと言ってもらえてとても嬉しいです!!(;ω;) (2022年11月7日 23時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年11月7日 0時