好きな人に集る男を嫌いになるのは人の性 六 終 ページ47
「どうせお前もあの人を好いているのだろう。そんな人の前で無様な姿を晒し続けたいのか」
ドパッと勢いよく土方が川から飛び出てきて北大路の肩を斬った。
川の橋に降り立ち、全身びしょ濡れになりながら土方はタバコを出す。
「好いてるだァ?俺の中のこいつはなァ、そんな言葉ひとつで片付けていいほど単純なもんじゃねーよ」
口角を上げ、Aが訓練指導員になったばかりの頃を思い出す。
『土方さん。土方さんの剣はどんな剣ですか?』
「俺はなァ」
『私の剣は、師匠の剣です。何かを守るために輝き、何かを守るために強くなるーー無敵の剣なんですよ』
道場で互いに真剣を持ち対峙し、彼女は刀を目の前にやり刃を見据える。
「アイツのことが好きだが、それと同じくらいアイツに――」
『だから、私の剣はいつまでも強くなる。止まることを知らない、強さを求めて自らに鉄を穿つ、最強の剣士なんです!』
なんてね、と冗談のように笑う彼女は、冗談ではなく本当にいつまでも強くなる
「俺はアイツに、憧れてもいんだよ」
永遠に強さを追い求める、土方にとって目標となる光の先にいる侍だった。
離れた部屋にいるAを見て土方は笑う。
「一本だァ二本だァ、んなもん何本取られようが関係ねーよ……腕一本もげようが足一本取られようが、首一つつながってる限り戦わなきゃならねーのが真剣勝負ってモンだ」
口から血を流しながら、土方は余裕の笑みを浮かべて煙草を吸った。
「これだから野蛮な芋流派は嫌にな」
「そーいや灰皿借りたぜ。煙草吸わねーと調子でねーんだ」
土方が小皿を見せてきて、北大路は目を見開いた。
(俺の、皿?)
北大路が自身の胸に目を落とせば、巻いていたはずの皿が見当たらない。
「貴様ァァ!あの時!返っ……」
北大路が土方の方へ駆けようとするが、上体を前にやった瞬間、懐から布に付けられた皿が垂れ下がってきた。
(あれ?ある……まさかアレはあの時の!!)
土方が見せたのは、北大路が勝負を始めた際に最初に投げつけた小皿だった。
彼が気づいた頃には、土方が背後を取っていた。
「擬似だかなんだか知らねーが、騙し合いなら負けねーよ」
背後から勢いよく北大路に強い一撃を放ち、彼を川に打ち落とした。
「早く終わらせてAのとこ行かねーとなァ……来いよ、本物の喧嘩見せてやる」
剣に焦がれて人を好く 一→←好きな人に集る男を嫌いになるのは人の性 五
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刹那*桜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!! (2022年12月27日 20時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメ失礼します!! めっちゃ面白いです!! これからも頑張ってください! (2022年12月26日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - あたりんさん» ありがとうございます!! (2022年11月20日 0時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年11月14日 16時) (レス) id: c0f0373936 (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - 花香さん» コメントありがとうございます!9個もあって長いですなか一気に読んでいただきありがとうございます!!わりと読みづらい所もあるかと思いますが好みと言ってもらえてとても嬉しいです!!(;ω;) (2022年11月7日 23時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年11月7日 0時