【銀魂】シスコンな兄の尻拭い９ 【柳生篇】

姉離れも妹離れもしてやるものか　五 ページ17

「負けてねェ。剣にヒビが入っただけだ。それにAに関しちゃ、お前の方がボコボコにされてただろ」

　池田屋でAと戦った土方は状況が状況なだけに本気でやり合いはしなかった。
　その後に真選組の訓練指導員としてやってきた彼女と沖田が戦った時、彼は見事に完敗していた。

　沖田はそのことを言われれば何も言い返せなくて、しばらく間が空いたあと「あの人にゃ勝てませんぜ」と小さく息をこぼした。

「んでも万事屋の旦那には剣折られてましたねィ。ありゃ負けでしょ」
「負けてねェ。喧嘩は心が折れねェ限り負けたことにならねェ」
「さっすが土方さんだ。目の前で隊士十人がやられたのに心が折れねェたァ、憧れるぜィその図太さ」
「どうせ刀使い物にならんし折っちまおうかな。お前の首おとして」

　土方は、のんきにテレビを見る沖田に後ろから刀を向けた。

「おいおい、負けは潔く認めるもんだぜ副長さんよォ」

　戦が部屋に来て笑っていった。

「お前、俺にも負けてんだから負け四回だろ」
「てめーに剣の腕で負けた覚えはねーよ。だいたいお前、殴り合いなら強いがそれでも五分五分じゃねーか。って……」

　土方は青筋を浮かべて後ろにいる戦に目を向けるが、彼の姿を見て言葉が止まった。

「お前、どうしたんだその怪我」

　戦は顔にガーゼを貼っており所々に怪我をしていた。
　沖田もつられてそちらを見て驚く。

「また喧嘩でもしたんですかィ？節操のねェ猿ですねィ」
「沖田てめーのその整ったツラ引っ掻いてやろうか。はァ……近藤に巻き込まれてゴリラに殴られたんだよ」

　戦はため息をついて言った。
　あの後、騒ぎを収める際にバブルス皇女に散々な目にあったらしい。

「ゴリラて。近藤さんはそんな凶暴な人じゃないですぜィ」
「いやアイツもゴリラだけどそっちのゴリラじゃないの！本物の方！バブルス皇女！」

　分かってて言ってんだろ！と戦は青筋を浮かべてツッコんだ。

「ったく、せっかく万事屋の手伝いしてやったのに散々な目にあったぜ。柳生九兵衛の野郎もいやがったし」
「柳生家って言やァ、スナックで土方さんと隊士達を負かせたそいつが柳生家の次期当主……柳生九兵衛だって話じゃないですかィ」

　沖田は戦の出した名前に反応する。

「しかもそいつ、Aさんを姉にするとか言ったとか……まァそいつが男とは言え、恋人だとかぬかさないだけまだマシですけど」
「……」

　戦は何か言おうとするが、少し考えて口を閉ざした。

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