記憶喪失なんてモンは治さなくても都合よく教えればいいのさ 九 ページ27
事務部屋に来て襖を開けると、部屋の中には大量の書類の山があった。
「す、凄い量ですね」
「Aさんが休みの間は俺と他の奴で事務処理を回してるんですが、なかなか終わりが見えないですね」
伊東は書類を渡しAはそれに目を通していくが、効果はあまり芳しくない様で。
「……あの、私はどんな人だったんですか?なんだか、色んな人と色恋になってる?みたいで」
Aは書類から目を離して伊東に尋ねた。
銀時や桂の恋人発言から色々困惑している彼女は自分を色恋沙汰の多い、だらしない人なのではないかと思っていて。
しかしそれを聞いた伊東は目を丸くする。
「ふ……なかなか面白いことになってるみたいですね」
今まで固かった伊東の表情が緩んで、面白そうに目尻を下げる。
「心配しなくても、貴方はそういう人ではありませんでしたよ。まあ、色んな男を寄せ付ける、魅力のある人ではありましたが」
Aは少し安心するが、伊東が少し複雑そうな顔をしていた。
「伊東さんにとって、私はどんな人でしたか?」
「……そうですね。変わった人、でしたよ」
Aの呼び方に少し反応してしまいながら、伊東は今までの彼女との事を思い出す。
――伊東さん!この資料の続き持ってる?なんか沖田君がどっかやったんだけど!?
「初めは、仕事真面目な人だと思ってましたよ。でも」
『ねえねえ伊東君。伊東君は好きな人いたりするの?』
『はあ?急になんですか』
『あれ?照れてる?』
『照れてません』
『鴨君、鴨君!今日事務処理片付いたらハンバーグ食べに行こハンバーグ!奢ってあげるから!』
『それ貴方が食べたいだけでしょう。一人で行けばいいじゃないですか』
『ヤダー、鴨くんとじゃないとヤダー』
「だんだん距離が近くなってきて、俺を見つけたらいつでも話しかけてきて」
『鴨ちゃん鴨ちゃん!見てほら、このメガネ付けた猫のマスコットキャラ。鴨ちゃんにそっくりじゃない?』
『何ですかそれ。というか変な名前で呼ぶな』
『この猫、カモノハシのカモちゃんっていうらしいよ。似てるから伊東君のこともカモちゃんって呼ぼうと思って』
『猫なのかカモノハシなのかどっちなんですか。俺はどっちでもない人間ですから』
『でも鴨ちゃんっていう呼び方可愛いからそのままがいい』
「……若干、うっとうしかったですね」
「え゛」
伊東の言葉にAは顔を引きつらせた。
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刹那*桜(プロフ) - noche/ノーチェさん» ありがとうございます!! そう言っていただけでめちゃくちゃ嬉しいです! これからも頑張っていきます(⸝ᵕᴗᵕ⸝⸝) (2022年9月13日 21時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
noche/ノーチェ(プロフ) - 続編おめでとうございます!ずっと前にお気に入り等々は済ましていたのですがコメントは初めてさせていただきます。いつもこの作品を見るために占ツクを開いているくらいとてもこの作品が好きです。これからも愛読させて頂きます!これからも頑張ってください! (2022年9月13日 20時) (レス) id: 958fbd2e0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年9月13日 20時