困ったときは笑っとけ笑っとけ 四 ページ6
「戦地を離れたことを逃げとは思わないよ。それに、逃げたっていいんだよ」
Aは目を伏せて少し辛そうに言う。
「自分の命のためなら例え逃げだと言われたって、自分のために、自分だけは……そうやって、利己的になってでも、皆に命を守ってほしかった。皆に、帰ってきて欲しかった」
だんだん声が小さく震えていく。
気づけば目の端から涙がこぼれていて、慌てて手で拭って。
「A……」
「Aさん……」
坂本と新八は胸が締め付けられ、坂本はAの肩を抱いて「大丈夫じゃき」と安心させる様に優しく囁く。
Aは落ち着くと、人前で泣いてしまって恥ずかしくなったのか少し顔を赤くする。
「ちょ、ちょっと私、水飲んでくるね!」
気恥ずかしそうに、ぴゃーっと走っていく彼女をみて坂本と新八は互いに顔を見つめ笑った。
「にしても皆すごいんですね。ウチの大将は何考えてんだか、プラプラしてますけど」
「アッハッハッ! わし以上に掴みどころのない男じゃきにの〜」
水樽を担いで神楽に水を飲ませる銀時を見て、坂本は笑っていった。
「じゃが、人が集まってくる男っちゅーのは何か持ってるモンぜよ。わしやヅラの志に惹かれて人が集まっとるよーに、おんしもあのチャイナさんも、そんでたぶんAも……奴の中の何かに惹かれて慕っとるんじゃなかか?」
「んー、よく分からないんですけど、でも……」
新八が言葉に悩み、何か言おうとしたとき近くから悲鳴が聞こえた。
「助けてェ!」
新八と坂本の目の前で乗客が触手のようなものに捕まっていて。
「え、何アレ……」
新八が驚き戸惑っている横で、坂本はまた幻覚でも見たと思って笑っていて。
「ほっとけほっとけ幻覚じゃ。アッハッハッ!」
「うわァァァ! 坂本さァァん!」
呑気に笑う坂本が触手に捕まって船の外に連れて行かれた。
「! 坂本君!」
Aがすぐに助けに行こうとする。
しかし彼女も触手に捕まって船の外に出されてしまった。
「Aッ!」
銀時が名を呼び助けに行こうとするが、すぐに足を止めた。
「ちょっ、やだっ!どこ入って!んっ」
何故かAに絡みついた触手が服の中に入ってきて、彼女は色っぽい声をもらす。
「マッテロAースグニタスケニイクカラナー」
銀時は少し顔を緩めて、助けに行くふりをしていて。
「こんな危険な状況で何ふざけてんだアンタ!」
新八が銀時の頭を殴ってツッコんだ。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年8月29日 18時