鬼の前に降る流れ星 五 終 ページ45
「アナタはとても純粋で綺麗な人だ」
「え」
道信が口にした言葉は、今までの会話の流れで出てくるようなものではなかった。
予想外だったのかAは驚く。
「心も容姿も素敵な人だ……けれど、だからこそ煉獄関に関わってはいけません。あそこに足を踏み入れれば、あなたも命は」
「死ぬ覚悟はできていますよ」
「!」
道信の言葉を遮って、Aは少し低い声で伝えた。
「貴方は私の強さも、弱さもを知らない」
「……あの場に身を投じて戦っていけるとお思いか」
少し道信の目が鋭くなる。
無駄死には許されない、とでも言うようで。
「人を殺す鬼を護るのです。それ相応の力と覚悟を持っていなければその身も砕けましょう」
彼女は地面に片膝をつき、縁側に座る道信の手を取る。
「貴方と共に地獄巡りを致しますよ、鬼道丸殿」
目の前で守護を誓う女を見て、道信はある言い伝えを思い出した。
今は絶滅してしまった「
中でも温和な者は、その力を使って大切な人を護る習性があるとか。
その星人は圧倒的な強さで護りきる、守護神となって護るべき対象の前に立つ。
それは流れ星のように、生きる事を望む者に、死の矢を防いで生を与える。
鬼はその時、自分は流れ星を掴んだのではないかと思ってしまった。
――
「なかなか敵さんも尻尾を出さねーな。雑魚をやったところで何もでねーや」
沖田は倒した人々の山の上に座りながらぼやく。
「しかし、ちっと暴れすぎたかな」
彼が後ろを見れば、そっちにも何人か倒れていて。
前方から足音が聞こえてきて、耳馴染みのある男の声がした。
「オフの日まで仕事とはご苦労だな。お前がそんなに働き者だとは知らなかったよ」
その声の主、土方を見て沖田はゲッと声をもらした。
「おいおい、だいぶやってんねー」
土方の後ろから戦が出てきて、地面に転がっている人たちを見て笑う。
「アンタも一緒なんですかィ」
「ちーと、小僧が俺の妹を変な事に巻き込んだらしくてな……水臭ェじゃねーか。俺も参加させてくれよ、総悟ちゃん」
ニーッと笑う戦へ沖田は「気持ち悪いでさァ」と嫌そうに返した。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年8月29日 18時