今の世の中は血の繋がりがなくたって家族を名乗れるものらしい 四 終 ページ23
「お前なァ、ガキじゃねーんだから。それより仕事どうしたんだよ」
「早めに終わらせた！ ね〜、一個だけ！ お願いっ」
「はあ……おめー程々にしねーとガキに舐められるぞ」
源外はAに押し負けてカラクリ玩具を売ったが、その周りで子供達が不思議そうにしていて。
「えー、だってカラクリ好きなんだもん」
「……そーかよ」
源外は彼女の言葉に嬉しそうにして微笑んだ。
「……まったく。容姿が大人に近づいたとは言え、相変わらず子供っぽさは残っているんだなアイツは」
桂は遠目からAの様子を見て呆れていた。
けれど、どこか嬉しそうで
「まァ、そんなところが愛らしくて好きなんだがな……恋慕というのは恐ろしいものだな」
桂はフッと笑って彼女に背を向け去っていった。
――
工場の外で、Aと源外は三郎の手の上に乗せてもらって、夜空を眺めていた。
「私、源外さんに会えてよかったよ」
「なんだ急に。褒めてもなんもやらねーぞ」
「ふふっ、そんなんじゃないよ」
Aはクスクスと笑った後、少し寂しげな表情をする。
「私、小さい頃に両親を亡くしたから……源外さんが親みたいで、すごく胸の内があったかくなる」
「……」
源外は黙ってしまった。
彼女の過去のこと、両親のことは本人から既に聞いている。
Aにとって家族の温かみは、しばらくの間触れていなくてむず痒いものだった。
「……ほんとの親子じゃないのに、勝手だよね。ごめんねっ」
Aは取り繕うように笑顔を貼り付け、慌てて謝る。
「バカヤロー……世の中には血が繋がってなくても家族みてーな奴らが沢山いるもんだ」
ーー俺はオメーのこと、娘みたいだと思ってるぞ。
「！！」
求めていたもの。
欲しかった温もり。
生みの親を亡くし、育ての親のように慕った松陽まで亡くし、心の器は冷えきっていた。
誰かに甘えたかった。
大人に甘やかして欲しかった。
彼女は心の中で、そう思っていたのだろう。
わがままだと思って抑え込んでいたものが、過分に与えられて。
「ッ……ずるいよ、ほんと」
Aは涙を流しながら嬉しそうに笑った。
主人公の兄 戦のイラスト(※イメージ崩壊注意)→←今の世の中は血の繋がりがなくたって家族を名乗れるものらしい 三
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作者名：刹那＊桜 | 作成日時：2022年8月29日 18時
