やっぱり子供は大人にトキメいちゃうもの 一 ページ8
『よかったら、私のところに来ませんか』
親が殺されたあの雨の中で
差し伸べられた手は温かく
差し込んだ光は眩しく
差し出される優しさは、酷く胸を焦がしてきた
私の心はいつまでも、あの人の手の温もりを覚えている
忘れられない
忘れたくない
『私……先生のことが、好きなのかもしれない』
私は先生が好きだった
大きく温かな存在
とても大切で、一緒にいると胸がうずく
けれどそれは、救ってくれた光に対する敬慕であり
大人に対する
生きる意味だとしてすがりつく、たった一つの命綱だった
幼くして一人になった私には、何もなかった
そこに光が差し込んだのだ
生まれた憧れは生きる糧になり、やがて
それなくしては生きられない精神を生んでしまう
自分には救ってくれたこの人しかいないと
依存という、歪んだ執着を積載していった
あの頃の
けれど
『A。貴方の人生はまだまだ長い。もちろん私もその隣で歩き、貴方の足元を照らし続けます。ですが……あなたの歩む道は、いずれ貴方自身が照らしていかなければなりません』
『私は貴方のそばからいなくなったりはしません。だから、そんなに辛そうな顔をしないで……A』
先生は幼い少女の、ぶれやすく不確かな感情を優しく包んでくれた
――
憧れだと気づいた
依存していたのだと気づいた
一人で、立てるようになったつもりだった
けど自分の心が彼を1位から離さないことも、最初から気づいていた
それは未だに自分が過去に心を縛られ続けていると
まだ彼に依存してしまっていると
一人で歩けない弱い人間だということ
それを認めたくなかった
でも
「いいじゃねーか。引きずってても」
「え……」
「お前のそれは、別に過去に乗り越えられてねーんじゃねェ。ただ純粋に、
「依存なんかしちゃいねーよ。お前は一人でも、ちゃんと立って歩いてんじゃねーか」
「!!」
彼の言葉でパリンと心の鎖が砕かれていく感覚がした
「お。表のモザイクが外れたぞ」
呆然とする私を放置して銀ちゃんは表の一位を見た
「あー、やっぱ1位は先生か……ま、あの人にゃ勝てねーな。お前の初恋の相手だし」
笑っていじってくる彼に
「そんなんじゃないってば。バカ」
私の心は救い上げられた
やっぱり子供は大人にトキメいちゃうもの 二→←幼馴染とは定期的に同窓会をしよう 五 終
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年5月27日 2時