泥だらけの手でも離さない 二 ページ45
「奴らの狙いは俺だ。俺が出たら逆方向に逃げろ。てめーなら足一本でそこそこいけるハズだ。Aさんもそっちに回ってくだせェ」
「沖田君それはッ」
「足負傷した上にガキ連れてんだ。チャイナがいくら逃げられるとはいえ、アンタの力なしじゃ危険すぎる」
沖田は止めようとするAの言葉を遮って押し通した。
「いいか。この一件、誰にも喋るんじゃねーぜ」
「……お前、一人で片すつもりアルか」
沖田が全て一人終わらせようとしていて神楽は彼をじっと見る
「この件に関しちゃ、こっちも偽証だなんだ色々やってんでね。土方さんにバレちゃ、クビになっちまうわァ。あの時あそこにAさんがいたことも隠してる状況だしな」
「!沖田君、気づいてたんだ……」
Aは薄々気づかれていると思っていたが少し驚いていた
「資料を見てあの時のことを思い出すまで忘れてましたけどねィ……」
「それなら私も一緒に戦うよ」
「Aさんはまだあのとき真選組の一派じゃなかったから関係ねーでさァ」
「でもっ!」
「あん時みてーに、大事なとこで刀振る覚悟のねェ人は足手まといなんですよ」
「ッ!!」
Aは痛いところを突かれて目を見開いた
二年前の六角事件の時、六角宗春がこちらを殺そうとしてきた時
Aは彼に刀を振うことができなかった
沖田の今の発言が本心なのかは分からないが、少なくともこの状況で敵を殺す覚悟がない者が前線に出れば足手まといになるのは事実である
「……不器用アルなお前も」
神楽は沖田の気持ちを察して小さくため息をついた
「けど隠したいのはホントに偽証アルか。霧江の耳にパピーのやったことが入らないように、知ってるやつ全員黙らせるつもりなんじゃないアルか」
「……そんなんじゃねーよ」
「お前、本当にそれでいいと思ってるアルか」
霧江は父親が何の悪事を働いていたのかを知らない
なぜ死んだのかを知らない
「霧江にそれを知らせないまま、お前が罪を被ったまま隠しておく事が霧江にとって、お前にとって本当に最善だと思ってるアルか」
沖田は神楽の言葉を聞いて少し黙った
「言っただろ。汚れた目ん玉だからこそ見えるもんがあるって」
「コイツの親父はなァ、家族のため……娘を護るため、てめーの手を汚して死んでいったんだ」
「その娘が今度は親父のために手を汚そうとしてる。バカげた話じゃねーか。俺を仇と思ってる限りコイツの手は汚れることはねーよ。なんせ俺ァ無敵だからな」
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年5月27日 2時